2008年からの金融危機のあおりで、2009年は50代の正社員にもリストラの一大嵐が吹き荒れるかもしれない。

もし、会社から退職勧告を受けてしまった場合、まず手にとってほしいのが、『知らないとソンをする退職・転職マニュアル』(田中耀一著、日本実業出版社)。メーカーを経て、現在外資系企業に勤務する著者は、一貫して人事畑を歩いてきた。多くの転職者、退職希望者と接する中で損な辞め方をする人があまりに多いことに驚くという。

そんな現役人事マンが書いただけあって、退職金や雇用保険といった制度的な知識のみならず、一サラリーマンとしての心得が、非常にリアルな視点で描かれている。たとえば、「長い目でトクを追求する」という意味で、仕事の整理や引き継ぎ、円満退職といったことは基本的なことだが重要であると指摘。前職の人脈が生きてくる可能性が高いからだ。

辞めることが決定した場合、退職金など、金銭的にはとにかく上乗せをしてもらって辞めることを考えなくてはならない。社労士として長年仕事をしてきた私が、サラリーマンの退職について一番痛感しているのは、一般に失業給付といわれる雇用保険についての知識が欠落している人があまりに多いということだ。

「自己都合」で退職した場合と、「会社都合」で退職した場合は、給付日数が倍以上違ってくる。が、会社に言われるまま退職届を書いてしまうと、自動的に「自己都合」になってしまうことが多い。

このことを知らなかったがゆえに、大損するケースを少しでも減らしたくて書いたのが拙著『300万円得する!「会社の辞め方」完全ガイド』(北村庄吾責任編集、小学館)である。前述の雇用保険の部分を中心に、丁寧な図解を交えつつ、極力わかりやすくまとめてみた。

今の20~30代の若い人たちと違い、若い頃から終身雇用、年功序列が当たり前であった50代以上の世代は、自らのキャリアやスキルについて真剣に考えて仕事をしてこなかった人が多い。上に言われるがまま仕事をこなしてきただけの人が、いきなり再就職となっても、上手に自分を売り込めないケースがほとんどである。

そんな世代に向け、中高年専門の再就職コンサルタントが実例に基づいて書いた本が『チャンスをつかむ50代再就職』(上田裕之著、技術評論社)である。本書は、再就職にあたり、長年の業務の中で無意識のうちに身につけたスキルを引き出す手助けをしてくれる。たとえば、機械のオペレーターを何十年もやっていた人。時間軸だけで見ると、ひたすら同じ作業をこなしてきた自覚しかないのだが、それでも熟練者と初心者とでは大きな違いがある。単純作業といえども、実は多くのスキルが身についているものだ。

本書はそんな部分を抽出し、履歴書に反映し面接に生かす技術を伝授してくれる。文中にコンサル用語的なカタカナが多く、中高年には少々読みにくいと思われるのが惜しいところだが、特に大企業から中小企業へ再就職する人にはお薦めできる。

50歳を過ぎてから転職や再就職をする場合、元の勤め先が大企業でも、次なる勤め先は中小以下の企業となるのが一般的だ。大企業のようにシステマティックにできておらず、それこそコピー取りから自分でやらなければならないうえ、会社の看板で動くことができない。起業家になり、配属された部署を一人で一から立ち上げて背負うくらいの気概で臨んでほしい。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=プレジデント編集部)