ノーネクタイ、サンダル履き、手錠、10キロの体重減

「アイ・アム・イノセント(私は無実)」。東京地裁(東京・霞が関)で日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏(64)が発した言葉だ。この発言、ちょっと早いが、今年の流行語大賞になるかもしれない。

特別背任事件でゴーン氏の拘留理由を開示する手続きが1月8日、東京地裁で行われた。

報道によると、ゴーン氏は午前10時半、425号法廷に現れた。昨年11月19日の1回目の逮捕から初めて公の場に姿を見せたことになる。紺色のスーツにノーネクタイの姿。ネクタイは自殺防止から着用できない。靴も逃走防止から認められず、サンダル履きだった。腰には腰縄、手には手錠がはめられている。頬がかなりこけていた。逮捕されてから51日、この間に体重が10キロほど痩せたという。

2019年1月8日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者の勾留理由開示を控え、東京地裁前で大鶴基成弁護士の到着を待つ報道陣ら。(写真=時事通信フォト)

ゴーン氏がどう無罪を主張するかに強い関心

東京地裁によれば、425号法廷の傍聴席は42席しかない。司法記者クラブに加盟する報道各社の記者席やゴーン氏の関係者に用意された席を除くと、一般の人が傍聴できる席はわずか14席。この14席の傍聴席を求めて1122人が東京地裁前に早朝から長い列を作って並んだ。倍率はなんと80倍。

大半は傍聴券を少しでも多く取るためにメディアが集めたアルバイトとみられるが、それでも80倍という倍率は記録的だ。ゴーン氏が自らの口でどう無罪を主張するかに強い関心が集まった証左である。

「私は無罪」が流行語になるようでは困る

ゴーン氏は傍聴席をゆっくり見渡した後、弁護人の前の席に着いた。その後、裁判官から意見陳述を求められ、証言台の前に進んで立ち、手元のメモを時々見ながら英語で陳述した。意見陳述は通訳も含めて30分間続き、最後にはこう述べた。

「私は無実」
「確証も根拠もなく、容疑をかけられて不当に拘留されている」

断っておきたい。書き出しで、「『私は無罪』は今年の流行語大賞になるかもしれない」と書いたが、決してゴーン氏をほめているわけではない。これはゴーン氏の主張があまりにも単純だったことへの皮肉だ。「私は無罪」が流行語になるようでは困る。

ゴーン氏の意見陳述に対し、裁判官は「関係者に接触するなど罪証隠滅をするに足る相当な理由がある。国外に居住拠点があり、逃亡の恐れもあると判断した」と拘留の理由を説明した。

拘留理由を開示する手続きが終了すると、ゴーン氏は再び護送車に乗せられ、収容先の東京拘置所(東京都葛飾区小菅)に戻っていった。