200万円を追加出資するも、会社は破産

ここまで、学生時代のアルバイトがきっかけで会社を買うことになった点では、齊藤さんも井上さんも一緒。

レコード会社を買った井上さん。「本当に買ったら地獄を見ました」と振り返る。

だが、ここから両者の明暗は分かれることになる。

「しかし、蓋を開けてみれば会社は火の車でした。これは抜本的改革が必要だと思い、前社長の右腕だった専務や役員たちにネットでの音楽配信事業などをすぐに提案しました」

しかし、社員たちは井上さんの話にまったく聞く耳を持たなかった。

「従来のCDの売り上げにこだわり『うちのアーティストは音楽配信なんて嫌がりますよ』の一点張り。そのくせ経費管理は甘く、役員たちは儲かったバブル期の悪い癖が直らないのか、毎晩飲み食いで散財する始末。それに追い打ちをかけるように、会社の不況を察した有能な若手社員が次々に辞めていきました」

こうする間にも会社の借金は増え続けていく。背に腹は代えられず、井上さんは自分の貯蓄からさらに200万円を出資する。

「逃げるわけにもいかず、この会社を誰かに売りさばきたいと思ったのですが、買い手はまったく見つかりませんでした」

結果、井上さんの会社は破産。現在、彼は20歳の頃に逆戻りするように、アルバイト生活で細々と暮らしている。