AIを手と足で開発、出遅れ感漂う日本製

2018年10月4日、トヨタとソフトバンクが自動運転を基軸とした移動サービス新会社を設立することなどを含む「世紀の提携」を発表した。

握手するトヨタの豊田章男社長(右)とソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。(時事通信フォト=写真)

国内の時価総額1位と2位の企業による提携は多くの人を驚かせた。しかし今、クルマ、IT、電機、通信、電力、エネルギー等の産業が融合し、全産業の秩序を激変させる異業種戦争の攻防が世界的に起きているという見立てから言えば2社の提携は、実は至極自然なものに感じた。

それは「テクノロジー企業vs既存自動車会社の戦い」「日本・米国・独・中国の国の威信をかけた戦い」「すべての産業の秩序と領域を定義し直す戦い」という3つの要素をもつ次世代自動車産業の攻防では、巨額の開発予算をも示唆する「時価総額」というゲームのルールにおいて、日本勢は米中主要企業から大きく見劣りする状況からも明白だった。

自動運転を巡って、これまではグーグルをはじめとしたテクノロジー企業が長らく牽引してきた。自動車メーカーはそのあとを追いかける格好になっていたが、2018年1月、GMが19年からの完全自動運転実用化を発表した。日本勢もトヨタを中心に20年東京五輪開催前の実用化を目指す動きに拍車がかかっていたが、やや出遅れ感が漂っていた。

自動運転実用化が近年スピードアップしてきている理由としては、AIのディープラーニング(深層学習)の進化、センサー技術の進化、AI用半導体の進化が指摘される。テクノロジー面だけ見ると、すでに一定条件化での自動運転は実現可能な段階に入っており、国家・企業間の競争のポイントは、1年単位という時間軸の中で、どの国家・企業が社会実装を真っ先に実現できるかに移ってきている。

自動運転テクノロジーの“陰の支配者”と呼ばれる米国の半導体メーカー・エヌヴィディアのジェンスン・フアンCEOも、9月に日本で開かれた催しで講演し、自動運転実用化のタイミングを2年以内と宣言した。

「次世代の自動車は自動運転の能力を得ていくだろう。きっと、自動運転機能がない車は『アンティーク』と感じられるようになる。2年以内には、自動車が自ら車線に沿って走ったり、止まったりすることは、当たり前に感じるだろう」(フアンCEO)