睡眠不足の人はボケやすい、というのは本当だった! 最新の研究によると、睡眠と認知症には密接な関連性があるという。では、どうしたらいいか。名医からアドバイスをもらった。

脳内の「ゴミ」は、睡眠で一掃できる!

「近年の研究で、睡眠と認知症の間には、密接な関係があることがわかってきました」

※脳の海馬に一時的に蓄えられた記憶は睡眠中に大脳皮質へ転送される。この仕組みが健全に働かなければ、記憶は定着せず、やがて認知症になる。

兵庫県尼崎市にある長尾クリニックの院長で、『認知症は歩くだけで良くなる』など、数多くのベストセラー家庭医学書を執筆する長尾和宏氏はそう語る。

「認知症の主要な原因であるアルツハイマー病は、アミロイドβというタンパク質の『ゴミ』が脳内の神経細胞に蓄積することで発症します。ワシントン大学の研究では、眠りを断たれたマウスの脳内にアミロイドβが蓄積し、睡眠させると少なくなることが報告されました。つまり家庭のゴミが毎朝ゴミ収集車で回収されるように、脳内のゴミは睡眠時に分解され、一定以上の量に溜まらないようになっているのです」

ところが睡眠不足になると、アミロイドβの分解が追いつかず、脳内の「ゴミ」は蓄積する一方となってしまう。それが認知症を引き起こす原因となるのだ。さらに近年解明されてきた「脳内の記憶メカニズム」の観点からも、睡眠不足が認知症を招くことがわかってきたという。

「人間の記憶は、側頭葉の内部にある『海馬』という器官から大脳皮質に転送されることで定着します。海馬の神経細胞は1億個であるのに対し、大脳皮質の神経細胞は100億個。いわばパソコンのメモリーと外部の大容量ハードディスクのような関係です。海馬の容量は少ないため、新しい出来事を記憶するためには、どんどん大容量の大脳皮質にデータを転送しなければなりません。その海馬から記憶の転送と固定が行われるのが、睡眠中なのです。そのため睡眠に問題があると、新しい記憶の保持ができなくなってしまいます」