現代は情報化社会と呼ばれているが、それは中国古代の戦国時代でも同じだった。
当時は、説客(ぜいかく)と呼ばれる政治ブローカーたちが各国を遊説し、己に有利な情報を触れまわっていた。この真偽がわからない情報の洪水を利用して、いかに成果をあげていくかも、為政者の腕の見せ所だったのだ。
この「情報」という切り口では、次のような話がある。
斉の国に孟嘗君(もうしょうくん)という人物がいた。彼は食客である夏侯章(かこうしょう)に対して、馬四頭と百人扶持(ふち)という厚遇を施していた。ところが夏侯章の方は、いつも孟嘗君の悪口ばかり言っている。
ある人がそれを孟嘗君に知らせると、
「構わないから、ほうっておきなさい」
との答。今度は、薫之繁菁という食客が、見かねて夏侯章に問いただした。すると、彼はこう答えたという。
「孟嘗君殿は、諸侯ほどの力がないにも拘わらず、わたしに馬4頭と百人扶持を与えてくださった。わたしは少しの功績もないのにこれを頂いている。それなのに悪口ばかりいっているのは、少しでも功績を立てたいと思ってのことなのだ。
というのも、あの方が『度量人だ』と評されるのは、わたしの悪口を意に介さないから。つまり、わたしは身を捨てて孟嘗君のために尽くしているのだ。だから、これだけはやめるわけにはいかない」――。
なるほど、「くだらない悪口など気にしない度量人」と他人から評価してもらうためには、まずくだらない悪口を言ってくれる人が必要になる。しかし、そんな人は、傍目からみれば、「悪口しか言えない愚か者」「所詮、悪い意味での批評家だよね」としか思われないだろう。そうした損な役割を自ら買って出て献身している、というわけだ。
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