貧困に苦しむ女性が、期間限定でアダルトビデオ(AV)に出演し、カネをためて貧困から脱却する。そんなシナリオは、現実にありえるのだろうか。自らも貧困家庭で育ったという翻訳家のタカ大丸氏が、AV業界の関係者に聞いたところ「女性より男性のほうに可能性があるかもしれない」という答えが返ってきた。どういうことか――。

※本稿は、タカ大丸『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

職業としてのAV女優・男優は、どのくらい稼げる仕事なのか――。※写真はイメージです(写真=iStock.com/fabioderby)

問題は「マインドセット」にあり

貧困から抜け出すために、「AV女優」という道を選ぶ人がいる。その選択は、はたして現実的なのだろうか。

マヌエル・エルナンデスはアルゼンチン人で、間もなく来日10年となる。奨学金を受け取り来日して専門学校で学び、テレビ制作会社を経てAV業界に入り、現在はフリーで制作ディレクターを務めている。もちろん日本語は何の問題もない。私は単刀直入に「貧困脱出の方法として、AV出演はどうなのか?」とマヌエルに聞いた。彼の表情が少し曇ったように見えた。

「難しいんじゃないかな」

私としては、ある意味予定や期待とは違う答えである。マヌエルは続けた。

「なぜかというと、言ってみれば簡単にお金が入ってきてしまうんですよ。18かそこらで人前でちょっとパコパコしたら、次の日かその次の日には取っ払いでお金をもらえるんです。誰でもそうですけど、簡単に入ったお金って簡単に遣ってしまうから残らないんですよね。結局、マインドセットの問題だと思う。入ってきたお金をどう残すのか、貯めるのか、活用するのか、貧しい人はそれを知らないことが多いんです。それを知っている人ならば、AVであれなんであれ貧しさを抜けられると思いますが、僕が見ている限りだと、抜けられない女の子のほうが多いです。ホストにつぎ込んでしまうからね」

しかも、と彼はさらにAV女優のマイナスの札を開けて見せた。

「賞味期限が短いんですよ。まあ2年かな。5年やっている人がいれば大ベテランですよ。それで彼氏のためにシャンパンタワーとか言って――あの子たちって、必ずホストのことを“彼氏”と呼ぶけど、本当の彼氏なんかひとりもいませんよ――大金を遣うことだけ覚えて、賞味期限が過ぎても無駄遣いだけは一流だから、むしろ借金が残っていたりします」

それでも、賢くやっている元AV女優は確かにいるのだという。

「現在のAV業界では、必ず月に1回性病検査を受けなければなりません。費用にして1万円少々ですが、これは出演者の自腹です。で、その一番大手の病院が新宿にあるのですが、そこにはものすごい数のAV男優・女優が来るので、非常に強い固定収入なんですよ。それに目をつけたある元AV女優が、とある医師と組んで、この性病検査を少し安い価格で受けられる病院を立ち上げようとしている事例はありますね」