2018年3月期に13年ぶりの最高益を更新したエステー。好調な同社を率いるのが創業者・鈴木誠一氏の三女、鈴木貴子社長だ。トップ就任は5年前。

大手自動車メーカーや外資系企業で培った手腕を発揮し、顧客の多くを占める女性たちの心をつかむ商品開発に力を入れ、業績をV字回復に導いた。

最高益生んだ、大ヒットトイレクリーナーの企画書

17年10月、私どもは全国のスーパー、ドラッグストアなどで「洗浄力 モコ泡わ トイレクリーナー」を新発売しました。便器にスプレーするとモコモコと広がる泡でトイレ掃除ができるという手軽さが受けたのだと思います。発売後の3カ月で年間販売目標60万本を達成するヒット商品になりました。

エステー社長 鈴木貴子氏

それまで、トイレクリーナーというとリキッドタイプがほとんど。ブラシでゴシゴシこすらなければなりません。

でも、ユーザーの立場からすれば、もっと楽にトイレをきれいにしたいはずです。そんな洗浄剤があってもいいという発想から17年春に開発がスタート。幸い、当社には「消臭力」というヒットシリーズがあります。そのブランドイメージを最大限に活用して、ネーミングも「洗浄力」としたのです。

R&D部門から私の手元に上がってきた企画書には、新商品の狙いが的確にまとめられていました。私が企画書で重視していることは、まずターゲットが誰か。次に、日常生活で使うシーンの具体的な描写。そして、これまで世の中になかった価値の提供という3点になります。