小学生が「父:専業主夫、母:キャリアウーマン」を読解
2018年、開成中学の入試問題に「インスタグラム」という言葉が出てきたことが、塾関係者の間で話題になっている。
問題文で取り上げられたのは、小説『きまじめな卵焼き』(青山美智子著)。主人公は幼稚園児の子供を持ちつつ、夫に家事と育児をすべて任せて、仕事中心の生活を送るキャリアウーマンだ。「専業主夫」の夫は、自作の絵をインスタグラムに投稿しており、それがきっかけで個展を開くことになった。夫が数日間留守にするため、主人公は子供の弁当を作ることになる。だが、子供の好物の卵焼きが、どうしてもうまく焼けない。そこから、自分のアイデンティティがゆらぎ、夫の個展が失敗することすら望むようになる――。
問題文では、「絵なんか売れないで。誰にも認められないで」という部分に線が引いてあり、主人公の気持ちを問うている。中学受験の最難関校は、小学6年生に「大人の視点」を持つことを求めているのだ。
この開成中の物語文は2つの点で特徴のあるものだった。
(2)インスタグラムが物語文の中にも登場したこと。
「離婚」や「母子家庭」を扱った出題も目立つように
まず、(1)について。近年の中学受験「国語」では、物語文に登場する人物・家族の構成が複雑になっている。重松清の短編小説『卒業ホームラン』のような典型的な家族像での親子愛をテー
たとえば、2008年の駒場東邦中の問題文でも取り上げられた『タイドプール』(長江優子著)は、次の一節から始まる。
「インターホンがなったのでドアをあけたら、お母さんがとどいていた」
物語のテーマは、小学5年生の女の子と、父の再婚相手「マコさん」とのかかわりだ。主人公は次第に、マコさんが朝はいわゆる「継母」(血のつながりのない親)で、夜は「マコさん」(大人の女性)だと気づく――。そんな複雑な家族関係が、中学入試の素材として当たり前のように使われているのである。