貴族や大財閥などセレブの子息が学ぶ、英パブリック・スクールのイートン校。同校には厳しい競争があり、優秀な生徒は「特権的階級」として特別な服装が許されるだけでなく、同級生に罰則を与えることもある。その目的はリーダーとしての自覚を促すためだ。同校には「君たちは命令するために生まれてきた」という言葉もあるという。その「ヤバい授業」の内容とは――。

※本稿は、「プレジデントFamily2018夏号」の特集「トップエリート校の夏休み」の記事を再編集したものです。

皇太子夫妻の長女・愛子様が短期留学した「英イートン校」の実像

皇太子夫妻の長女・愛子様(学習院女子高等科2年)はこの夏、イギリスのパブリック・スクール、イートン校に短期留学した。

1440年に創設された同校はデーヴィット・キャメロン前首相をはじめ19人のイギリス首相を生み出し、ウィリアム王子、ヘンリー王子なども卒業した名門男子校だ。男子校だが、サマースクールに関しては女子も受け入れているため、愛子様も参加した。

イートン校とはいかなる学校なのか。

イートン校の校庭と建物とチャペル(写真=iStock.com/MKHP)

教育学者・秦由美子氏の『パブリック・スクールと日本の名門校』(平凡社新書)によると、同校には厳しい競争があり、成績などによって選別された「特権的階級」があるという。

例えば、成績優秀で奨学金を受け、黒いガウンを着用するのが「カレッジャーズ」。さらに、その中でも優秀な生徒で金ボタンのついたグレーのチョッキを着用するのが「シックスフォーム」、スポーツ万能で赤いチョッキを着るのが「ポップ」。彼ら特権的階級は、規則を守らない生徒に罰則を与えたり、朝礼をまとめたりする役割などを担うのだという。

「日本ではとかく生徒を平等に扱う傾向があり、競争させることがあったとしても、受験戦争に勝ち残るための手段として使われることがほとんどだ。対して、イートン校での競争はリーダーとしての自覚を促すためのものである。厳しい競争に勝ち残った人間に、将来リーダーとして人の上に立つ経験を踏ませている。自覚を促し、ひとまわりもふたまわりも成長させるシステムといいえる」(同著)

イートン校で学んだ海陽中等教育学校の生徒の強烈な体験

秦由美子「パブリック・スクールと日本の名門校」(平凡社新書)

このイートン校に交換留学生として現地にわたった日本人の高校生2人に取材した。

2006年4月にトヨタ自動車・中部電力・JR東海などが出資して開校された全寮制の男子中高一貫校・海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)。イートン校を参考に設立しており、「日本を牽引する次代のリーダー」の養成を目指している。国際社会で活躍できる人材の育成として、開校当初からイートン校のサマースクールへ生徒の派遣をしたり交換留学したりするなど交流を深めてきた。

今年1月7日~2月8日までの1カ月間、交換留学生として派遣された6年生(高校3年生)の易稜大(えき・りょうた)さんと羽田樹(はだ・いつき)さんにイートン校の様子を聞くと、「時間割が非常にゆったりしていたことに驚いた」と口をそろえた。