エルドアン大統領の強権政治を投資家が嫌気

トルコの通貨リラの急落が世界経済に激震を与えた。リラの対ドル相場は8月10日、一時最大で20%も下落し、過去最安値を更新した。この流れが他の新興国通貨にも波及し、アルゼンチンのペソやロシアのルーブル、南アフリカのランドなども急落した。アルゼンチン中銀は政策金利を45%まで引き上げるなど、非常事態に追われた。

リラの対ドル相場の年初来の下落率が一時40%を超えるなど、事態はもはや通貨危機の様相を呈している。そもそもリラは、15年12月に米国が利上げを開始して以降、他の新興国通貨と同様に下落基調を強めた。それに加えて、エルドアン大統領による強権的な政治手法を投資家が嫌気したため、他の新興国通貨よりも強い売り圧力にさらされた。

今年6月24日の大統領選挙でエルドアン大統領が再選すると、リラの下落に拍車がかかるようになる。再選前よりエルドアン大統領が事あるごとに金融政策に対する干渉を肯定するような発言を繰り返す中で、トルコ中銀が7月24日の定例会合で利上げを見送ったことが材料視されて、リラ安が進んだ。

リラ安を加速させたトルコ政治への不信感

さらに米国との関係悪化が嫌気されたことが、10日のリラ急落を生んだ。そもそも両国の関係は、トルコ政府が米国人牧師を長期拘束したことでこじれていたが、10日に米国のトランプ大統領がトルコ製の鉄鋼・アルミニウムの輸入関税を大幅に引き上げると発表したことで、関係が急速に冷え込んだ。

つまりリラ安の根底には、そもそも米国の利上げという流れがある。そしてエルドアン大統領の強権的な政治手法がリラ安を加速させ、トルコと米国の関係悪化がさらに拍車をかけている。リラ急落を受けてトルコ中銀は13日に緊急対応策を発表し、リラはいったん反発したが、その場しのぎの手段では内政と外交への不安に基づく通貨の下落は止まらない。