来年、消費税は10%に上がる。生活への負担は大きいが、国際的にみればその税率は決して高くない。たとえば「理想的な福祉国家」ともいわれるスウェーデンの税率は25%だという。税率を上げれば、日本もスウェーデンのようになれるのか。欧州経済の専門家が考察する――。

消費税率25%でもスウェーデン人が幸せなワケ

日本の財政は火の車である。国の借金に相当する公的債務残高はGDP(国内総生産)の2倍以上で、財政危機に見舞われたギリシャよりも酷い。財政再建には、歳出と歳入の両面からの取り組みが必要となる。つまり、公共サービスを切り詰めて、増税を行うということだ。

しかし日本の公共サービスは、切り詰められるほど手厚くはない。教育費を例にとると、日本ではようやく幼児教育の無償化が実現するかもしれないレベルであるが、欧州では無料であることが一般的だ。

また日本の税金、特に消費税の水準は国際的に見て低い。日本の消費税は2019年10月までに10%へ引き上げられる予定だが、欧州諸国では消費税に相当する付加価値税(VAT)の水準は20%前後。このうち特に高税率なのがスウェーデンだ。

スウェーデンはVAT以外の税負担も重く、世界有数の重税(高負担)国家である。しかしながら、それに十分見合う高福祉が、政府によって提供されている。教育費は大学まで無料、20歳未満と85歳以上は医療費も無料だ。失業した際の復職制度も充実している。

90年代まで「借金の大きさ」は日本と同じだった

こうしたスウェーデンの「高福祉高負担モデル」は、戦後の高度成長期に確立されたものである。もっとも90年代に入って人口増加率がピークに達し、また不動産バブルが弾けるなどして、スウェーデンの高福祉高負担モデルは曲がり角に差し掛かった。90年代半ばには国の借金がGDPの約9割にも達し、当時の日本(はまだこのレベルであった)と並ぶ借金大国として、国際社会から否定的な評価が下されたこともある。

しかしながら、その後のスウェーデンは果敢にも高福祉の見直しに取り組んだ。具体的には年金制度改革(基礎年金の廃止と所得比例年金への一元化や年金保険料率の固定化)や医療制度改革(社会的入院削減のための在宅ケア推進や医療費補助の見直し)などを通じて、高福祉高負担モデルの持続可能性を高めることに成功したのである。

一連の改革の結果、スウェーデンの国の借金はGDPの5割程度にまで減少した。社会保障制度の改革が手付かずのまま雪だるま式に借金だけが増えていった日本とは正に好対照である。