時代に合った高福祉を模索してきたスウェーデン
そして何より、日本の場合、国の借金の規模が膨らみ過ぎてしまった。冒頭でも述べたが、国の借金はGDPの実に2倍以上の規模だ。削減どころか膨張に歯止めをかけるレベルでも、社会給付の合理化や効率化に努めざるを得ない状況にある。スウェーデン流の「高福祉高負担モデル」への転換など、日本では夢のまた夢である。
スウェーデンから真に学ぶべきは、彼らの改革スタンスにある。90年代に高福祉政策が曲がり角に差し掛かると、彼らはその効率化に努めて、政策の持続可能性を高めた。2000年以降も、失業手当や年金給付の減額を実施するなど、弾力的な調整を欠かさなかった。2008年には現役世代や将来世代のことを考えた「子ども手当」(08年7月)も導入している。彼らは常に時代に合った高福祉を模索しているが、そうしたマインドは、残念ながら日本に欠けているものである。
いつまで次世代にツケを回し続けるのか
日本は今後、高負担を前提に、中福祉ないしは低福祉モデルへの転換を迫られると予想される。財政再建を後回しにしてきたツケは非常に大きい。現役世代や将来世代の負担減のためには、高齢世代にも負担増を求める必要がある。とはいえ、そうして実現される福祉のレベルは、今よりも低下せざるを得ないだろう。
痛みを伴う改革をする覚悟が国民、そしてその代表である政治家に求められるところである。政治家に求められるのは、日本の将来的な社会保障制度の在り方を国民に真摯に説明し、幅広い世代から賛同を得るように努力することに他ならない。19年10月に消費税は10%に引き上げられる予定であるが、本当に少子化対策に充てられるのか、現役世代を中心に不信感は根強いと言えよう。
安倍政権は6月に新たな財政健全化計画を発表する。支持率の低下が続く中で、痛みを伴う内容となることは考えづらい。日本はいつまで次世代にツケを回し続けるのだろうか。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。