米国との関係悪化が収束しても強権政治は不変
米国との関係悪化は意外に早く収束するものと考えられる。トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国の最東端、ロシアや中東と接する地政学上の「要」の存在である。そのトルコがロシアに接近すれば、中東の国際秩序が米国にとって不利な形に変わる可能性がある。スタンドプレーが際立つトランプ大統領とはいえ容認できない展開だろう。
先に欧州連合(EU)との間でも輸入関税を巡り亀裂を深めたトランプ大統領であるが、結局は矛を収めた。11月に中間選挙を控え実績の積み重ねようと焦るトランプ大統領であるが、トルコにストレスを与えて中東の国際秩序を乱すことはかえってマイナスポイントになるのではないか。
もちろん、気まぐれなトランプ大統領のことであるから、米国との関係悪化が収束してもいつまたそれが蒸し返されるか分からない。ただ言い換えれば、トランプ大統領は熱しやすく冷めやすいわけであるから、米国人牧師の解放が実現するなどしたら、両国の関係悪化もまた唐突に収束する可能性が高いと考えられる。
小手先の対応に終始すれば、リラ暴落を誘いかねない
しかしながら、エルドアン大統領の強権的な政治そのものは変わらない。それどころか、米国との関係悪化が収束し、リラ相場が持ち直せば、国難を乗り越えたとして態度をますます硬化させる恐れがある。つまり外交への不安が弱まっても、内政への不安が和らがない限り、リラ相場が落ち着くことはないだろう。
恐らくトルコ中銀は、資本規制という形で通貨の取引を制限したり、また景気に配慮しながら小刻みに利上げを進めたりして、リラ安に歯止めをかけようとしてくるはずだ。ただしこうした小手先の対応に終始すれば、かえって投機筋の攻撃を誘い、リラの暴落を誘いかねない。