科学、数学以上に、人文科学を重んじよ
近年は、AI時代を担う人材を育成するため、「STEM」教育(※)を重視せよという動きが日本や米国などで活発化しています。しかし、私はむしろ文化系学問、とりわけ「人文科学」の裾野を広げ、深く追究していくことのほうが大事だと考えています。
※:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の略
第1の理由は、AI時代を担う人材には、AIには不可能な「人間ならではの判断能力」「コミュニケーション能力」「説得や交渉、合意形成の能力」「ホスピタリティマネジメント(おもてなし)の能力」が必要だから。
第2の理由は、ITエンジニアでも、AIに対する目標設定といった業務フローを、人間の特性を踏まえて設計、実行しなければならないから。つまり、理系の技術者でも人間の本質的な部分である要求をつかみ取るスキルが必要になるということ。
これらの理由により、イチかゼロで割り切れない世界で確率値などを解釈し、統計的に優位性のある結論を必死に模索してきた人文科学が重要だと考えます。特に「心理学」や「社会学」を勉強するといいでしょう。人間の本質を追究する「哲学」「文学」も、先端AIのさらに先を開拓し、次世代AIのお手本を描き続ける、いわば「水先案内人」です。
もう1つ若い人にぜひ学んでほしいのは「統計学」です。「統計学」を学べば、人文科学や社会科学の分野で、読み書きやそろばんのリテラシーを、創造的に使いこなせるようになります。