AIが得意な能力、苦手な能力

また、先に挙げた演繹能力を向上させるには、「論理的思考能力」を磨くことが不可欠です。私はこの能力を身につけるには、「リカレント教育」が重要だと考えています。つまり、1度社会人経験を経て、現場でのリアルな問題意識を抱くようになってから、大学院などへ進み、本格的な研究に取り組むのです。そのほうが、「新しい問題を見つけて定式化し、解決する」というAI時代に求められる研究スタイルに向いています。

高度な論理的思考能力を磨いたり、「あらゆることに疑問を持ち、何度もなぜ? なぜ? を繰り返す」といった発想の習慣を変えることで、シャーロック・ホームズ型の人間にもなれるのです。

▼AIが得意な能力
・テキスト、音声、画像などの、大量な情報を「認識」する
・莫大なデータを、高速で「検索」「分類」「要約」「変換」する


▼AIが苦手な能力
・人間の本能、動機、常識を踏まえた判断能力
・コミュニケーション能力
・説得や交渉、合意形成の能力
・おもてなしの能力
・マネジメント能力
・読み書き、そろばんのリテラシーを創造的に使いこなす力
・事象に対し、「仮説」を立てる力
・上記全般を支える論理的思考能力
これらの能力を身につけるためには、「心理学」「哲学」「統計学」が有効。
野村直之
メタデータ代表取締役社長
理学博士。1984年、東京大学工学部卒業後、九州大学で理学博士号取得。NEC C&C研究所、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所客員研究員、ジャストシステム、リコー勤務をへて、2005年、メタデータ設立。著書に『人工知能が変える仕事の未来』『実践フェーズに突入 最強のAI活用術』、共著に『WordNet』がある。
(構成=小澤啓司 撮影=栗原克己 写真=Getty Images)
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