共通の話題を見つける、3つの基本テーマ

そうやって、ようやく会うことのできたお客さまに最初にお伝えするのは、会社名、名前、そして訪問の目的です。しかし、ダイレクトに「アパートを建てませんか」というような話はしません。まずは土地活用や相続問題など、何かしら抱えているお悩みや関心事を教えていただくことを目的に訪問したことを、お客さまに伝えます。

もちろん、最初から心を開いて打ち明けてくれるお客さまなどいません。「会うことすら面倒だ」と思われている方が大半です。そこで、ご高齢の方が多い個人のお客さまとは、共通の話題を見つけることを常に意識しています。その際の基本テーマは「時事問題」「季節の話」「地域の話題」の3つ。「今度のお祭りで、私もお神輿をかつぎます」と話せば親近感が湧き、お客さまとの心の「壁」が低くなります。

ご家族の話もポイントで、私はお客さまの配偶者やお嫁さん、お婿さんの出身地に注意しています。私の父は長野、母は栃木、妻は福岡の出身で、もしも重なれば「同じ出身地です。奇遇ですね」と話を向ければ、「そうなのか」と顔をほころばせながら応じてくれて、その後の話が弾みます。法人のお客さまの場合、取引先で共通の知り合いがいることを伝えると、親近感だけでなく、信頼感も与えられます。

私はエリア内にいらっしゃる数百人のお客さまのなかで常時50人ほどのお客さまに積極的にアプローチをかけ、週2回ほど訪問します。基本的にアポイントメントを取りますが、あえて取らないこともあります。お客さまの生活リズムを把握したり、ご家族に話を聞けることもあるからです。

そうやってお客さまと親しくなる一方で、難しいのは距離感です。一生懸命通って親しい間柄になると、具体的な仕事の話を持ち出しにくくなるのです。「せっかくのよい関係が壊れてしまわないか」と不安になるからです。そこで私の場合、具体的な仕事の話は、お客さまから持ちかけていただけるように努めています。

「最近の若い人はどんな間取りのアパートが好みなんだろう」といった日ごろの会話のなかに、お客さまの悩みや関心事のヒントが隠されているもの。それに関する資料をさりげなくお渡しして、少しずつ意識を高めていただきます。すると何かのタイミングで、「古くなったアパートの建て替えのことだけど」というように、お客さまから話を振ってもらえ、クロージングの手ごたえも確かになります。

飛び込み営業では、契約に至るまで平均で約2~3年、なかには7年かかったケースもあります。いかに根気強く通い続けるか。そのためには、お客さまのお役に立てるように戦略を練ることが重要です。そして少しずつ共通の話題で信頼関係を築き、何かあったときに最初に顔を思い浮かべていただける存在になっていくのです。

▼私ならこんなお話でお客さまの懐に飛び込む
普段の話のなかから共通の話題を見つけていくことがポイント。そうすれば親近感とともに信頼感を与えることができる。

北條拓実(ほうじょう・たくみ)
大和ハウス工業 東京本店 集合住宅事業部 第二中高層営業部 第三営業所 係長。1983年、東京都生まれ。2007年、立正大学法学部卒業後、大和ハウス工業に入社。東京本店集合住宅事業部営業部に配属される。入社以来、通算20期中11期で、営業成績上位者の「マイスター表彰」を受ける。
 
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(構成=田之上 信 撮影=加々美義人 写真=iStock.com)