東京メトロ有楽町線、麹町駅近くのフランス菓子店「パティシエ・シマ」。ここでしか買えないのが「キュービック・セック」という焼き菓子の詰め合わせ。焼き菓子の詰め合わせは数もあり、日持ちもして無難だが、定番中の定番で記憶に残りづらい。しかし、この逸品ならそんな心配はない――。

それは、“現代の名工”が編み出した

シナモン風味のクッキー「ポルボロン」、ココナッツを使った「キャレド・ココ」、チーズの塩気がきいた「サブレ・フロマージュ」の3種。いずれもひと口サイズの四角型で、それぞれ18個ずつ四角いプラスティックケースに収められている。購入時に3種を詰め合わせてもらうわけだが、それらが整然と四角い箱に並んだ様子は抽象画のようで美しい。この形にした理由を代表取締役の島田進さんが教えてくれた。

「このように詰めれば、コンパクトにおさまりますし、何より崩れにくい。うちの焼き菓子はデリケートに出来ているので、余白なくおさまるこの形が最適です。1種類ずつでも購入できますが、やはり3種の箱詰めは映えます。この界隈はオフィス街なのですが、秘書の方が手土産用によく購入してくださいます」

島田さんは、この道50年の大御所である。長年にわたってフランス菓子を日本に広めた功績を称えられ、2005年にはフランス政府から農事功労章を受勲。さらに2017年、わが国において、厚生労働省が卓越した技能者を表彰する“現代の名工”にも選ばれた偉大なパティシエ(菓子職人)だ。キュービック・セックは、そんな達人が編み出した逸品なのである。3種の菓子について触れる前に、島田さんの歩んできた道を紹介したい。