ホテル研究家の石原隆司さんは、「ビジネス接待をホテルの朝食で」というスタイルが人気になると見ている。3つの理由があり、まずホテルの朝食の質が高まっている。そして、朝は気分がよくミーティングの質も上がる。さらに料金が安い。朝からシャンパンを無料で出すホテルまであるという。

ことさら、オレンジジュースにこだわる

1980年に画期的なホテルが開業した。香港のザ・リージェント(2001年からはインターコンチネンタル香港)である。創業者のロバート・バーンズらが打ち立てたホテル哲学が、何より驚嘆の対象であった。

当時、高校生だった私は、このホテルの哲学とコンセプトに憧れ、ホテルマンを目指したのである。このホテルグループから始まった、恐らくは世界初といえることがいくつもある。まず、シンガポールのマリーナベイ・サンズの登場によって世界的に広まったインフィニティー・プール。すなわち、プールの水が景色の水平線と合わさって見えるプールだが、この元祖はザ・リージェントのジャクージである。

ロビー中央に据えられたアイランド型チェックイン・カウンターもそうだ。運営上の不都合を退けて、壮観な眺めに接しながらのドラマティックなチェックインを実現した。バスルームの深いバスタブと独立シャワーブースの標準装備も、このホテルからである。バスルームを「汚れ落としの場」から「リラクゼーションの場」へ転換させた。

このホテルが掲げた画期的なコンセプトが、「3つのB」であった。ドイツ音楽の3大B、バッハ、ベートーベン、ブラームスになぞらえてのことと思うが、ベッド(Bed)、バスルーム(Bathroom)、ブレックファスト(Breakfast)である。快眠をいざなうベッド、前述のバスルーム、そして朝食。焼きたてのパン(特にクロワッサン)、淹れたてのコーヒー、そして、絞りたてのオレンジジュースには格別にこだわった。最初に口をつける確率の高いからだ。氷なしの適温の絞りたて、繊維を絶妙に濾すなどの工夫をしているという。

そもそも、朝食はホテルにとって非常に重要な部分だ。ホテルの宿泊客は、夕食を外でとる場合が多数である。そうした宿泊客にとって、朝食がホテルで楽しむ唯一の食事となる。しかも、チェックアウト直前になるため、朝食がホテル全体の印象を左右してしまうといっても過言ではないからだ。

さて、高級ホテルの朝食には、いくつかのスタイルがある。