私立大学医学部の学費は高い。日本一学費の高い大学は川崎医科大学(岡山県倉敷市)で、6年間の総額は4550万円だ。しかし、年収600万円ほどの「中流世帯」でも、子供を医学部に進学させることは十分可能だという。100以上の病院を渡り歩いたリアル「ドクターX」と呼ばれるフリーランス麻酔科医の筒井冨美氏が、その方法を解説する――。
偏差値は上昇の一途だが、学費は下降化している
今、医学部受験が空前のブームとなっている。
日本経済は、依然、労働者が景気回復を素直に実感できるとは言いがたい状況だ。かつてのように「東京大学を出たら年収1000万円は確実」とは限らない世の中だが、医師免許は今なお「年収1000万以上」が期待できる日本で唯一の資格ではないだろうか。
しかも、国公立大学の学費は全学部同額なので6年間の学費総額は約350万円とお得感が大きい(後述するように私立大医学部は少なくとも2000万円以上)。ここ10年間、医学部の定員が1700人以上も増え、受験生が急増した結果、医学部入試の偏差値は上昇する一方で、「地方の国公立大医学部≒東京大・京都大の非医学部」となった。
これは「センター試験の得点率が85%以上、一科目でも取りこぼしがあるとアウト」という厳しい水準である。さらに、首都圏の国公立大の医学部に限ればセンター試験の得点率は軒並み90%以上が求められる超難関だ。また、地方の医師不足を受けて、地方の国公立大の医学部は卒業後、地域の病院において臨床研修の義務のある地域枠を増やしている。札幌医科大学(北海道札幌市)が2018年には90名(定員110名)を地域枠に充てるなど、首都圏からの一般学生が受験可能な地方医大定員は減る一方である。つまり、地元在住の受験生にとっては、首都圏の私立大学医学部と併願する経済的に余裕のある家庭の受験生が少なくなる分、多少なりとも合格しやすくなっているとも言える。
▼金持ちでなければ医学部はムリというイメージはもう古い
一方、私大医学部と言えば、今なお「学費総額5000万円!」「開業医の跡継ぎじゃないとムリ」というイメージがあるとも聞く。だが、これはいささか古い考え方だ。
現在、私大医学部の学費は全般的に低下傾向(後述)で、医師不足や医師偏在(地方に少ない、など)の対策として、地域枠や専攻科限定の奨学金が増えている。またJASSO(旧:日本育英会)や銀行の教育ローンも医学部限定の高額貸与コースを提供している。
各医大が独自に成績優秀者を特待生として囲い込む動きもある。よって、これらの手段を上手に組み合わせれば、世帯年収600万円程度の一般家庭から、学費の安い国公立大医学部はもちろん、私大医学部に進学することも可能になりつつあるのだ。