数千万円の奨学金を貸りても返済免除される仕組み

【3:掘り出し物の「地域枠」「専攻限定枠」を探す】

近年の医師不足や医師偏在の対策として、卒業後、勤務する地域や専攻(診療)科を限定する形での奨学金が増えている。例えば、順天堂大では東京都と共同で「東京都枠」を設けている。「学費全額+生活費月10万円」を貸与し、「9年間、都の指定する病院で産科・救急・離島医療などに従事で返済免除」という大変お得な制度がある。この東京都枠は、東京慈恵会医科大学(東京都港区)や杏林大学(東京都三鷹市)にも存在する。

また慶應大には研究医向けに200万円の奨学金制度を設けている。東北医科薬科大学(宮城県仙台市)の55名(定員100名)は地域枠であり、最高3000万円の奨学金が貸与される。また、北里大学(神奈川県相模原市)の相模原市枠(学費全額)のように、定員1、2名の小規模な枠も存在するので、大学ウェブページなどでまめに情報収集するといいだろう。

【4:地方自治体や病院の奨学金も見逃すな】

深刻化する医師不足を受けて、地方自治体が医学生向けに独自に設ける奨学金制度も増えている。おおむね「月額15万~30万円程度、給付期間の1.5倍を指定地域で勤務すると返済免除」のものが多い。

また、病院独自の奨学金も増えている。例えば、日本最大の医療法人グループ徳洲会には「月額15万円、貸与期間の3分の2の勤務で免除」という奨学金制度がある。同グループは救急や離島医療に力を入れており、そういう分野に興味のある学生にはお勧めである。

*筆者の筒井冨美氏は『プレジデントムック 医学部進学大百科 2018完全保存版』にて、「出会い・結婚」「子育てと仕事の両立」などに関して若手女性医師と語り合った
▼「医者になるためなら、田畑を売ってもよい」親族
【5:困ったときの教育ローン】

もし、上記の特待生や奨学金を得られなかった場合でも、貸与型奨学金や教育ローンといった「借金で進学する」という選択肢もある。A、B、Cの3例を挙げよう。

A. 日本学生支援機構(JASSO、旧:日本育英会)による貸与型奨学金
年収600万円世帯の場合、高校時代に一定の成績を収めれば、「最大で月6.4万円(無利子)」の貸与型奨学金が利用できる。さらに「医大生ならば月16万円(有利子)」奨学金も併用できる。6年間で借りることができるのは最大で1613万円。

B. 日本政策金融公庫
最高350万円までの借り入れが可能で、JASSOとの併用も可能である。国際医療福祉大・順天堂大・慶應大・日本医科大などの“割安”医大ならば、A+Bで学費のほとんどを賄うことができる。

C. 銀行ローン
「学費が4000万円かかっても、年収1000万円以上が30年以上続けば返済できる」という計算は、金融のプロたる銀行員ならば簡単に思いつく。「医学部限定、上限3000万円まで」という教育ローンは、すでに多くの銀行から提供されている。親が公務員など安定した職業に就いている場合や、祖父母の不動産を担保にできれば、学費の捻出も可能だろう。

私大医学部の偏差値急上昇の一因は、一般家庭出身者の私立医大受験への参入である。急速な少子化の進行によってひとりっ子や孫ひとりのような家庭が急増しており、親族の財産を結集すれば学費を捻出できるケースが多い。「孫が医者になるためなら、田畑を売ってもよい」という祖父母は珍しくない。