審査の結果、優勝したのは保険会社の坂本冬美「夜桜お七」。優勝チームは感極まったのか、壇上で号泣していた。

筆者は夏フェスに毎年通っているが、大型フェスの中規模ステージよりも観客が入っていたし、盛り上がっていた。夏の終わりにふさわしい、サラリーマンのフェスだった。

かつてはフジテレビが協力していた

現場の盛り上がりはもちろん、ここ数年、新宿三井ビルのど自慢大会はツイッターでも盛り上がっている。本来は関係者以外の撮影は禁止なのだが、さりげなく撮影する者がおり、現場の動画や写真が投稿されている。注目度も高く、3日間の開催期間中、たびたびツイッターの「トレンド」にも入っていた。「社畜の祭典」などと揶揄するコメントもあったが、大半はサラリーマンたちのはしゃぎぶりを面白がる好意的な反応だった。

予選からSNSでも話題になった「紅」(画像提供/三井不動産ビルマネジメント)

これほどまでに盛り上がりを見せる「のど自慢」は、いつ始まったのか。主催の三井不動産に経緯を聞いた。

「本イベントがスタートしたのは、ビルが竣工した1974年のことです。当時まだ新宿の副都心は開発が始まったばかりで、新宿三井ビル以外は京王プラザホテルくらいしかありませんでした。副都心全体を盛り上げようという目的もあって始まったものだと聞いています。当時新宿三井ビルにはフジテレビが入居しており、初期のイベント運営に関わっていました。その縁で一時はテレビ中継もされていましたし、のど自慢大会の司会は、新人アナウンサーの腕試しの場と言われていたようです」(三井不動産ビルマネジメント株式会社・山崎真理さん)

現在は、博報堂が運営に協力しているとのこと。イベントは年々勢いを増しており、参加者の数はうなぎのぼりだ。

「震災の年やテナントの撤退が相次いだ年には減少しましたが、昨年と今年は90社以上が参加し、この数年の参加者は右肩上がりに増えています。みなさん入念に準備されており、社内で演出監督を立てているところもあるそうです」(同)

新宿三井ビルのど自慢大会には、「1社から4組まで参加可能」というルールがある。そして、3位以内に入った参加者は以降5年間出場できない。参加者をよりすぐるため、社内で予選を行う企業もあるそうだ。練習は業務終了後、会議室やカラオケボックス、スタジオなどで行う企業がほとんど。出場者でなくとも、応援は拠点をあげて行われるため、社内の交流も自然に生まれる。前出の山﨑さんが「テナント様の社内懇親・団結の場、テナント様同士の交流の場、ビルで働いている方のオフタイムを充実させるなど、このイベントにはさまざまな顔があります」と話すように、のど自慢大会自体が、テナント企業の組織活性化や人材育成に活用されているわけだ。