プロマジシャンの入江田翔太さんに、忙しいビジネスマンでもすぐに覚えられるよう、簡単なマジックを考案してもらいました。

盛り上がっても一回で切り上げる

「簡単に覚えられ、準備するものも少ないマジック」というお題をいただき、3つのマジックを考えました。詳しくは各ページをご覧いただきたいのですが、ここではマジックをするうえでの注意点をお伝えしましょう。

入江田翔太●東京大学建築学科卒。2009年にマジックの世界で最も歴史のある団体、S.A.M世界大会のテーブルマジック部門で優勝。著書に『かんたんなのに超ウケる! 東大式トランプマジック』。

初心者の方がよくやってしまうのは、「タネを見破られないように」という意識が強く働きすぎて、タネがある部分をギュッと握ってしまったり、無意識に見てしまったりすること。これでは、相手にタネ明かししているようなものです。キーになるのは、相手の注意をタネとは別のところに向けることです。もし見られたくない部分があったら、別に注意点を作ってしまえばいい。例えば、左手にタネが隠れているなら、右手を上げると相手の注意はそちらにいきます。マジシャンが「ここは重要です!」と動きを大きくしているところをお客様は注目するものなのです。

もう一つ重要なことがあります。マジックは相手に言葉で状況を説明することが多いのですが、その言葉を何回発するか、またどのような言い方にするかが非常に大切です。わざとらしいくらいに、いかにも「何か隠れてるぞ」と演技することも、成功の要素になります。ジェスチャーだけで説明や指示を出すのは、言葉を使うよりも難しいので、初心者は特に言葉をうまく使いましょう。例えば、「ここに100円玉がありますね、100円玉です」と、ゆっくり2回言うだけで、相手に強調していることが伝わります。

マジックは手技もセリフもありますから、上達には練習が不可欠。スマホの動画機能などを使い、自分のマジック風景がどう見えるのかを客観的にチェックしてもいいと思います。

宴会の席でタネがバレても、それはそれで盛り上がるものですが、同じマジックを2回やるのはご法度です。今回教えるマジックはどれも簡単なものばかりですから、調子にのって続けてしまうと、「なーんだ、そんなことか」と場が白けてしまう可能性が否めません。どんなに盛り上がっても、「私の余興はこれでおしまい。来年をお楽しみに!」と切り上げましょう。