二足歩行するだけで腰に負担がかかる
長年腰痛を患って、いろいろやってはみたけれどもイマイチよくならず、もう腰痛と友達のような長い付き合いになってしまっている……そんな人は多いのではないだろうか。
「そもそも人間の身体は4つの足で歩くためのつくりになっています。二足歩行が腰に負担がかかるのは当然です」
こう語るのは、ロンドン五輪の日本選手団本部の帯同ドクターで、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治氏だ。
「日常生活そのものが、腰に負担のかかるスポーツだと思ってください。負担がかかっているのに腰回りを支える筋肉が弱ければ、故障してしまいますよね。腰痛は肥満や喫煙、姿勢、さらには遺伝や老化、心理的因子など様々な原因が複雑に絡み合って起こりますが、かかっている負荷に対して腰が耐えられる強度になっていないことが根本にあるのは間違いありません。姿勢の矯正などで腰にかかる負荷を軽減するか、エクササイズで筋肉を強化するか、それ以外に解決策はないのです」
腰痛に苦しむ人がまず考えなければならないのは、自分の腰がどういったメカニズムで痛みを引き起こしているのか、仕組みを知ることだ。実は、それを理解するだけで腰痛の問題は半分くらい解決できてしまうという。
「腰痛はレントゲンなどの画像診断で骨の異常が認められる『特異的腰痛』と、画像診断で痛みの原因が判別できない『非特異的腰痛』の2つに大別されます。言い換えれば、“見える腰痛”と“見えない腰痛”ですね。腰痛患者の85%が後者の“見えない腰痛”と言われ、何年治療しても根本的には良くならないという問題を招いているのです。腰痛は脳で痛みを増幅して感じてしまうことがあるとわかっていて、痛みの原因がわからないというだけで、それがストレスになってさらなる痛みを招いてしまいます。でも、痛みの仕組みがわかれば自分で自分の腰の状態を判断できるようになり、対処法もわかるので不安に襲われることもなくなります。それだけで痛みの感じ方は大きく軽減されるのです」(金岡氏)
「腰痛の仕組み」とは、一体どのようなものなのか。順を追って説明しよう。