「余命ゼロ」いつ死んでもおかしくない
まず、がんになった人、大病を宣告された人に僕が言いたいのは、「闘わなくていいよ」ということと、「思いっきり泣いてね」ということです。これは僕自身の経験からも断言したいことですね。
僕が腎臓がんで「余命ゼロ」を宣告されたのは2005年1月、僕が45歳の時でした。
その一年前の2004年1月くらいから、禁煙したことで増えた体重を元に戻そうと15キロのダイエットに取り組んでいました。僕は目標を設定する時に、それがかなったら「こんなにうれしいことがある!」とか、「こんな自分ってカッコいい!」という具体的な情景をイメージする習慣があるんです。この時も、スリムになった“カッコいい自分”を想像しながらダイエットをしていたので、順調に痩せていました。周りも僕がダイエットをしていることを知っていたので、会うたびに痩せていく僕を見て、「ダイエットが成功しているんだね」という風に見てくれていたのです。
8月から9月にかけてアフリカのサバンナで原住民族の方々と一緒に生活をするというロケが入り、そこでお腹を下した。10月に入り、体力がどんどん落ちていったのも、アフリカでの生活の影響だろうと思っていました。
ところが、12月になっても体調は戻らず、疲れた体を引きずっていました。顔色もドス黒くなってきて、さすがに周りから「いくら役作りでも人相が悪すぎるよ」と言われるようになっていたのですが、その時は映画の撮影が入っていたので、病院に行くことは考えていませんでした。
そして、12月23日、真っ赤な血尿が大量に出たのです。ようやく自分の体が何か重大な異変を抱えていること気づき、急いで病院に駆け込みました。
幾度もの検査の後に出た診断は左の腎臓がん。しかも医師から、「がんの大きさが20センチにもなっていて脾臓(ひぞう)を圧迫しているので、脾臓が腫れて破裂寸前になっていますよ。いつ死んでもおかしくない状態です」と告げられたのです。
「即死でもおかしくない」という宣告に、もちろん動揺はしました。でも、すぐに気持ちを立て直すことができたのは、何度もの検査の間に毎晩のように大泣きしていたからだったと思います。