僕の芸能界の恩師で師匠でもある萩本欽一さんからの学びも大きかったですね。欽ちゃんはいつも、「人生は50対50。幸せも不幸せも同じようにくるんだよ。でも悪いことも受け入れるんだよ。そうすればいつか必ず良いほうに転じるからね」と言っていました。

人は悪いことが起きることを「避けたい」「受け入れたくない」と思うものです。でも、欽ちゃんは「悪いことにあったり、失敗したら、落ち込め、泣け、受け入れろ」と言っていた。そうしないとその体験から学べませんから。20代の僕はその意味を十分理解できていなかったのですが、40代で病気になって、ようやくその意味が分かったんです。

手術から5年後、医師から「完治」を告げられた

俳優 小西博之さん

言葉の力について教わったのも欽ちゃんからです。「いつも良い言葉を使いなさい」と言っていました。今は科学的に証明もされていますが、欽ちゃんはずっと前から言葉の持つ力を知っていました。「根拠なんてなくても物事を前向きに考えると人の脳は潜在能力を発揮する」ということを。やはり師匠は偉大です。

手術から5年後、医師から「完治」を告げられました。それから7年、僕は元気に毎日を過ごしています。目標通りに「徹子の部屋」に出演することもできました。今の僕は物欲がなくなり、肩の力が抜けて、何でも「まぁ、ええやん」と受け入れるようになっています。

「生きてるだけで150点!」「生きてるだけで誰かのためになっている」っていうことを、一人でも多くの人に伝えたい。今は、がんを克服した人の、ハッピーエンドの映画を作って、多くの人を泣き笑いさせることが目標なんです。

小西博之(こにし・ひろゆき)
1959年和歌山県生まれ。中京大学商学部卒業。教員免許を持つ。82年「欽ちゃんファミリー」の一員としてバラエティ番組「欽ちゃんの週刊欽曜日」のレギュラーに抜擢され、お茶の間の人気者になる。その後俳優として数多くの映画やドラマに出演。現在では年間100回以上の講演で「命の授業」を行っている。今年7月に『生きてるだけで150点!』(毎日新聞出版)を出版した。
(取材・構成=田中響子 撮影=澁谷高晴)
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