財務局幹部らは背任容疑で告発

さらに毎日社説は「籠池容疑者は複数の政治家の名前を挙げて学校建設の支援を求めていた。安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時、小学校の名誉校長に就いたことなどから、官僚が政権の意向をそんたくした可能性が指摘されている」と政治家や昭恵夫人の関与の可能性に言及し、官僚の忖度の問題を指摘する。

今回の逮捕容疑とは違う背任容疑にも触れ、「不当に安く国有地を売却し、国に損害を与えたとして財務局幹部らが背任容疑で告発され、特捜部は捜査している。立証のハードルは高いだろうが、価格や決め方が適正だったかどうかを明らかにしてほしい」と訴える。

そのうえで「『昭恵氏から100万円の寄付を受けた』という籠池容疑者の証言をはじめ、多くの疑問が残されたままだ。昭恵氏は公式の場できちんと説明すらしていない。国会は引き続き、究明に努める必要がある」と書いて筆を置いている。

「適正、適法処理」が当然

朝日の社説も「国有地問題を忘れるな」との見出しを立てて安値売却問題を取り上げている。社説の中盤で「一連の問題で忘れてはならないのが、国有地の安値売却だ」と書き、「小学校建設用地として、財務省は鑑定価格9億5600万円の土地を1億3400万円で学園に売り渡した。その値引きの経緯は今もなぞのままだ」と指摘する。

朝日社説は「国は地中のごみ撤去費として8億1900万円を差し引いたというが、相応する量のごみはなく、不当な値引きではないかと国会で野党が追及した」とごみ撤去費の疑惑も取り上げている。

「財務省は肝心の経緯の記録は『廃棄した』と押し通している。本省や近畿財務局と学園側との間でいつ、どんなやりとりが交わされたのかを具体的に詰めない限り、国民の共有財産が適正、適法に処分されたかどうかは判断できないだろう」

問題の土地が国有地である以上、国民の共有財産なのである。朝日社説の言うように「適正、適法処理」が当然なのである。その点は重要だ。

毎日社説同様、「焦点は、小学校の名誉校長を務めていた安倍首相の妻・昭恵氏の存在だ。学園の幼稚園で複数回講演してその教育内容を称賛し、学校建設を支援した」と昭恵氏の問題も取り上げている。

「売却契約の成立にむけ、国が学園側の意向をくむ場面はなかったのか。政治家やその関係者の関与はあったのか。必要に応じて財務省や財務局を捜索し、資料収集と職員からの聴取を尽くし、明らかにしてほしい」

「財務省や財務局」に対する家宅捜索と「財務省職員」への事情聴取。この沙鴎一歩も、大阪地検特捜部はそこまで踏み込むべきだと強く思う。

読売は森友学園問題にふたをしたいのか

毎日や朝日の社説と違い、読売の社説は「『教育者』が公金を私したのか」という的外れな見出しを掲げ、「多額の公金を食い物にした、との容疑である。事実であるなら、教育者として言語道断だ」と主張する。ここまできて国民のだれが籠池夫妻を「教育者」などと思うだろうか。

見当はずれもいいところだ。やはり安倍政権擁護が前提になってしまっているのだろうか。事件をすべて籠池夫妻の責任にして森友学園問題にふたをしたいのか。言い過ぎかもしれないが、今回の読売社説を読み解いていくと、そこまで勘ぐってしまう。

肝心の国有地の安値売却の問題については、社説の後半でわずかに触れているだけだ。

「森友学園を巡る疑惑の発端となったのは、大阪府豊中市の国有地売却問題だ。地中の廃棄物撤去費用について、国は、鑑定評価額から8億円余を差し引き、1億3400万円で売却した」

「特捜部は、市民らからの背任容疑の告発を受理している。近畿財務局の職員らが不当な値引きで国に損害を与えた、との内容だ」

しかも最後に「売却の過程で政治的な関与があったなどと、籠池容疑者は真偽不明の発言を繰り返してきた。口封じのための国策捜査だとも主張している。的外れも甚だしい」とまで書いている。的外れなのは読売社説のほうではないか。