森友学園問題がこじれた最大の原因は、安倍政権側も野党側も、2つの"核心的問題点"の把握とその解明にすぐさま取り掛からなかったからだ。

首相の「100万円寄付」は周辺的問題点にすぎない

森友学園問題がどんどん《周辺的問題点》の議論に発展していっている。確かに、森友学園側が安倍晋三首相から100万円の寄付を受けたと主張し、首相はそれを否定しているので、真実はどちらなのかを確定する必要はある。首相が嘘をついていたらこれは首相辞任に値する大問題だけれども、首相が寄付したかどうか、それについて嘘をついているかどうかの話は、元々の森友学園問題すなわち不当な価格で国有地が払い下げられたのではないかという問題とは無関係だ。

ここまで森友学園問題がこじれてしまった最大の原因は、安倍政権側も野党側もいわゆる核心的問題点の把握とその解明にすぐさま取り掛からなかったからなんだ。《核心的問題点》は、大きく整理すると2つ。

(1)売買価格の引き下げ要素となったゴミ廃棄費用約8億円の妥当性。
(2)政治家、官僚が今回の一連の手続きの中で、森友学園側からお金を受け取ったか。

ここを解明しないことには、この問題の全体解決への道は開けない。

(1)は安倍政権側が解明する責任がある。(2)は野党側が解明する責任がある。ところが今は、この核心的問題点を放置したままで、面白おかしく世間の興味を引くような周辺的問題点ばかりが議論されている。

自民党参議院議員・鴻池祥肇さんの「こんにゃく」発言に始まり、安倍昭恵首相夫人の「名誉校長」就任、園児の安倍首相頑張れコールに首相夫人の涙、財務省理財局長の模範的な官僚答弁、そしてなんといってもあの強烈な籠池ファミリーの個性。さらに最近では維新をボロカスに言うジャーナリストの登場と首相の100万円寄付話。

まあ面白いことが周辺的問題点として次から次へと出てくる。そもそも首相が森友学園に寄付をしていたとしても、首相が一学園に寄付をしたその行為の政治的信頼性が問題となるだけで、今回の森友学園問題を解決に導くことにはならない。なぜなら、首相が自らの選挙区外において寄付することは適法だから。

今回は首相が寄付をしていないと言っているので、首相が嘘をついているかどうかが焦点となってしまった。ゆえにここを放置するわけにはいかないが、国有地が安く売られたのではないかというそもそもの森友学園問題からすれば周辺的問題点である。今回の寄付について仮に首相が嘘をついていたとしても、それはその嘘が不適切だというだけの話であり、森友学園問題に何らかの不正があったことを立証するものではない。そうなるとここまで時間と金(国会議員や政府職員の人件費、メディアが報じることにかかるカネ、それらのために本来の仕事ができなかった費用=機会費用)をかけて「森友学園問題には政治家側の不正はありませんでした。寄付の点で首相が嘘をついていました」という結果だけを得ることになる。

もちろん首相が嘘をついているのかどうかは解明する必要がある。そして今回の一連の騒動があったからこそ、この首相が嘘をついているかどうかの問題が浮上してきた。だから今回の一連の騒動が全て無駄だったわけではない。

しかし首相が森友学園に寄付をしていたのかどうか、首相が嘘をついているのかどうかという話は大変スキャンダラスで面白おかしい話ではあるけど、元々の森友学園問題にとっては周辺的問題点であるにすぎないとの認識を持つことは、問題解決にあたって絶対に必要なことである。

スキャンダラスな話には飛びついてしまうのが普通である。しかしここで、いくらスキャンダラスな話であってもそれは周辺的問題点であると見抜く力こそが問題解決能力なんだ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.47(3月21日配信)からの引用です。全文はメールマガジンで!!

(撮影=市来朋久)
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