不透明なカネは派閥の崩壊で不要に

田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件、金丸信元副総理が議員辞職に追い込まれた佐川急便闇献金問題、最近では元秘書に有罪判決が出た小渕優子元経済産業大臣の政治資金問題……、「政治とカネ」の問題はいつの時代もやむことなく、しばしば政局を動かしてきた。

マイナンバー導入でお金の流れが明瞭になれば「政治とカネ」の不透明な関係にも光が当たる。となれば一番困るのは政治家の先生方ではないか。それなのに、なぜ与野党の議員はガラス張りのマイナンバー法に賛成したのだろうか。

実は日本のマイナンバー導入には半世紀ほどの歴史がある。

国民一人一人を番号で管理する仕組みの発端は佐藤栄作内閣。「各省庁統一コード研究連絡会議」を設置し、すべての国民に個人番号(個人コード)を割り振ろうとしたが、世論の反発は強く、実現には至らなかった。

その後、大平正芳内閣で「グリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)」の導入が決まった。少額貯蓄の利子を非課税扱いにする「マル優」制度を利用した脱税が横行したため、グリーンカードで預貯金を一元管理しようとしたのだ。しかし、海外への資金流出やプライバシー侵害を理由に反対論が強まり、結局、廃止に追い込まれる。

「当時、自民党が強く推していて、埼玉県の朝霞市にグリーンカードの電算センターを置くことになっていた。ところが『自由な経済活動を阻害する』という金丸信さん(故人・当時は自民党田中派の裏の大ボス)の一言で潰れてしまった。要はグレーゾーンを残しておかないと政治献金がもらえないからだろうと。そんな裏事情を取材して記事に書いた覚えがあります」