ファクスの回答だけでゼロ回答と断じてはいけなかった。そして、籠池さんからの要望の手紙のコピーが、政府の答弁を一気に崩し始めた。

手紙への返事、あのファクスの内容をどう読み解くべきか?

次から次へと新しい情報が出てくる森友学園問題。今回も共産党がほんと頑張ってるよね。彼らはどうやって情報収集しているのか。僕は酢豚のパイナップルと同じくらい共産党は嫌いだけど(人格じゃなくて思想的にね)、今回ばかりは共産党に拍手喝采だね。メディアや他の野党は何してんだよ。

首相夫人付き職員から籠池さんに送られたファクスは、役所では対応できないという回答だった。でも回答があるなら籠池さんからの要望があるはずなんだよね。籠池さんが首相夫人付き職員に手紙を送った事実は、手紙が入っていたとされる封筒の存在から明らかになっていたけど、肝心の手紙が不明だった。

手紙は首相夫人付き職員に渡っているから政府が確認すればそんな手紙はすぐに出てくる。ところが政府はそれを表に出さなかった。

そしたら共産党がその手紙のコピーを入手して公にした。この内容は非常に問題だ。繰り返しになるけど、これで政治家が金を貰って行政を動かしたという疑獄事件が立証されるわけではない。しかし、これまで政府与党が主張し続けた、首相夫人の影響は一切ないし、首相夫人付き職員や役所による配慮も一切ないという答弁が一気に崩壊する可能性が出てきた。

この籠池さんからの手紙による要望の後、くだんのファクスが籠池さん側に送られた。ファクスは籠池さんの要望にはゼロ回答しているように見えたけど、それは籠池さんの要望「全てに」回答していたのかどうかは不明だった。

ここは非常に重要な証拠の見方なので論理的にしっかりと考えてみて下さい。こういう状況はしょっちゅう出てくるので。

ファクスは要望に応えていないように見えるけど、じゃあ要望の「全てに」NOの回答だったのか? 違うよね。これは要望を見なければ分からない。

もしファクスの回答で「3つ」の事項にNOと言っていたとする。この時、要望が「3つ」であれば、これはまさに「ゼロ」回答と言える。ところが要望が「6つ」あったら?

その場合、ファクスの回答は「6つ」の要望のうち、「3つ」にNOと言ったに過ぎない。どうしてもNOと言わざるを得ない「3つ」だけにNOと言い、「残りの3つ」は保留だ。つまりこれはゼロ回答ではない。

ファクスによる回答の文面だけを見て、ゼロ回答だとは言えないんだよね。ゼロ回答かどうかは、要望と突き合わせて確認しなければならない。必要十分条件の論で言えば、ファクスの回答は要望を断った必要条件ではあるけれど十分条件ではない、ということになる。

首相夫人付き職員から籠池さんへのファクス回答では、確かに籠池さんの要望を断っていた。しかしそれは籠池さんの要望「全てを」断っていたのかどうかは不明。つまりファクスの回答だけでゼロ回答と断じてはいけなかった。ゼロ回答なのかどうかは、籠池さんの要望をしっかりと見なければならない。

しかし政府は、ファクスの回答だけでゼロ回答だと断じた。これは論理的ではなく大失敗だ。その上、共産党が入手した籠池さんからの要望の手紙のコピーが、政府の答弁を一気に崩し始めた。籠池さんの要望の肝心のところがきちんと実現しているんだよ。つまり籠池さんの要望の肝心の部分について政府はしっかりと対応していることになる。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.49(4月4日配信)からの引用です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!!

(撮影=市来朋久)
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