安倍晋三首相の妻昭恵氏の言動に注目が集まっている。議論は「私人」なのか「公人」なのかという点に集中しているが、すでに昭恵夫人の影響力は、その別を越えている。昭恵夫人の考え方、つまり「昭恵イズム」は、安倍首相などを通じて、国を動かしているからだ。

2013年12月、安倍晋三首相は東京・九段北の靖国神社に参拝した。現職首相による靖国参拝は、2006年8月の小泉純一郎元首相の参拝以来7年4カ月ぶりで、国際政治にも大きな波紋を広げた。なぜ安倍首相は靖国参拝を決心したのか。その背景にあったのは、昭恵夫人からの「鎮霊社」という助言だった――。(編集部)

安倍首相が靖国参拝時に訪れていた「別の神社」

それは、安倍晋三首相が就任1年目に靖国神社に参拝した翌年の秋のはじめのことだった。ここで言う就任とは、第二次安倍政権発足のことをさす。

私は、ある神道関係のシンポジウムに呼ばれて、パネラーとして出席した。そのとき、同席した別のパネラーから興味深い話を聞くことになったのだ。そこには、昨今、さまざまな形で物議を醸している安倍首相の妻、「昭恵夫人」がからんでいた。

安倍首相は、右派的な保守勢力から篤い支持を得ており、就任1年目での靖国神社参拝はそうした人々の要望を満たす意味合いを持っていた。

ところが、中国韓国からだけではなく、アメリカからもクレームがついた。アメリカ政府は在日米国大使館のウェブサイトに「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明を掲載した。その結果と考えていいだろうが、これ以降、安倍首相は靖国神社には参拝していない。例大祭のときに真榊を奉納するだけである。

実は、安倍首相が靖国神社に参拝したとき、境内にある別の神社を訪れていた。それが、「鎮霊社」である。

鎮霊社という名称を聞いても、多くの人はその存在さえ認識していないだろう。そもそも鎮霊社は目立たない場所にある。拝殿の手前にある中門鳥居の前を向かって左側に進み、南門の前で右に曲がると、その奥、本殿と並ぶ位置に鎮霊社はある。