お客様の心を掴むのは「業界順位」ではない
最近、メディアの方から「コンビニ業界再編」や「シェア争い」のことをよく聞かれるのですが、私はあまり本質的な議論ではないと考えています。
お客様がコンビニを選ぶとき、「1万8000店のチェーンだからここに入ろう」とか「業界3位だからここには入らない」と判断されるでしょうか。以前、中学3年生だった息子にどこのコンビニに行っているのかを聞いたことがあります。息子は生まれたときからコンビニに囲まれて育っている世代。一方、私は大阪の田舎の商店街で「竹増の坊主」と呼ばれ、学校帰りにコロッケをもらいながら育ちました。そこで、コンビニ世代の店選びの基準を知りたいと思ったのです。
自宅の近所にはローソンを含め3つのコンビニがありますが、息子はまず、A店にはあまり行かないと言います。理由は店員さんがいつも忙しそうで落ち着かないから。B店にはほとんど行かないと言う。ちょっと立ち読みをしただけで、あからさまに嫌なことをされるとか。そこでもっぱらC店を利用しているというのですが、理由は「店員さんがいつも笑顔だから」。このC店は運良くローソンでした。息子の話を聞いて、「なんだ、同じじゃないか」と思いました。時代が変わり、商店街がコンビニになっても、選ばれる店の条件は、いかに地域に愛され根差しているかという点なのです。
私たちの最大の強みは「地域愛」だと感じています。ローソンでは新規のオーナーを対象に、約1週間のBMC(ベーシック・マネジメント・コース)という研修を実施しています。研修の最後には「こんな店をつくりたい」というスローガンを書いていただくのですが、その内容はどれも「このマチで生きていく」という覚悟と愛に溢れています。
これは考えれば当然のことです。コンビニは、その地域に愛されなければ成り立ちません。ローソンはグループの企業理念として「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」を掲げています。この理念を実践していくのは簡単ではありませんが、オーナーの方々が書いたわずか数文字のスローガンにも、「地域愛」が溢れている。ここにコンビニというビジネスの本質があるとわかりました。