作成時間をかけるな簡潔明瞭にせよ

資料はシンプルであればあるほどいい、というのが僕の考えです。いい企画書とは本来、資料がなくても通じるアイデアが書かれているものでしょう。資料は頭の中を整理して転写しただけのものであって、大事なのは頭の中です。だから転写作業に時間をかけてもらっては困る。大層な資料をつくる時間があるなら、もっとビジネスパートナーや客先、取引先などのステークホルダーとしっかり交渉してこいという気持ちになる。構想を具現化、実現化して、ビジネスの骨格をつくるにはたくさんの人と会って話をする必要があります。転写作業に時間を使うより、そちらにもっと労力と神経を使うべきなんです。そこができていれば、資料のフォーマットや体裁は問わないというのが僕の主義です。

三井物産社長 安永竜夫氏

そういう考えから、僕は社長就任直後の社内改革の一環で資料のあり方も見直しています。これまで当社ではA3用紙にびっしりと書かれた非常に情報量の多い資料が作成されてきたのですが、それでは冗長になりやすいうえにファイリングもしにくい。そこでA4用紙に統一し始めている。資料の書き方も、まず結論を明記し、内容は平易な言葉で、箇条書き程度の簡潔な資料に改めるよう指示しました。

理由は2つ。1つは今言った通り、資料作成にかかる時間を削れということ。もう1つは何かというと、そのほうが英語化しやすいから。当社には連結ベースで約4万4000人の社員がいますが、日本人は約1万9000人程度です。また会社で扱うほとんどの案件に外国人スタッフが参加しますから、書類はすべて英語化が前提になります。よりスピーディに英語の書類を作成するには、大もとの書類が簡潔明瞭でなければいけない。