考え抜いた構成、文章をどうアウトプットするか。最後の難関が、デザインだ。孫正義社長の資料作りを数多く担当し、数々のプレゼンを勝ち抜いてきた達人が教える。

<デザイン編>

「プレゼンというと、話し方のほうに注目がいく傾向がありますが、経験上、特に社内に向けたプレゼンは資料で9割決まると考えています」

というのは、ソフトバンク在籍時、「ソフトバンクアカデミア」という後継者育成機関の第1期生として1位を獲得した前田鎌利さん。その後も、孫正義社長のプレゼン資料の作成も担当していたという資料作りの名手だ。

編集部員Tが新雑誌の企画を社長にプレゼンしたときのこと。慣れないパワーポイントでようやく仕上げた資料だったが「見づらい」と一蹴された。あの情報を入れなければ、この情報を説明しなければという思いに駆られて、書き込みすぎた典型だ。情報が必要以上に多い資料は、ツッコミどころが増えるうえに、記憶に残りづらい。

プレゼン用の資料は、読ませてはいけない。資料を見ながら説明したり、ディスカッションのネタにするのが目的。そのために、あくまでデザインはシンプルが鉄則だ。

「大事なのは、余計な情報をギリギリまで削ること。伝えたいキーメッセージを1つに絞って、余白をたくさん残したほうが、想像力をかきたてられた受け手は興味を示し、結果、採用に至りやすい。本編から削ぎ落とした情報は、アペンディックス(補足資料)として添えることでフォローできます」

たとえばアンケート調査の結果など、せっかくだからとたくさん項目を入れたくなるが、それでは導き出したい結果が埋もれてしまう。であれば、項目は潔く削って、一番強調したい部分をきっぱりと短い言葉、大きいフォントで見せるほうが効果的だ。

一番残すべき情報は何か、ということは、決裁者のタイプを考えて判断する。たとえば、同じ内容を示唆する数字データと顧客のコメントがあったとする。もし決裁者が論理を重視するタイプなら客観的なデータを、もし生の声を大事にするタイプならコメントを選べばいい。「何を示したら決裁したくなるか?」という目線に立って、情報を取捨選択するのだ。ただし経営層は基本的に数字で判断する。迷ったときは論理的なデータがいいだろう。

全体を通して、フォントや色のトーンを統一し、ページの統一感を出すなど、相手の頭にすっと入っていくようなデザインを心がける。見た目をよくしようとするだけの写真は逆効果なので入れない。

さらにいい資料にするためのコツは、少なくとも一日は寝かせること。

「なんとかして通したい、と熱のこもった資料は、ラブレターのように強い思いがあるわりに、余計なものが多すぎて、肝心なことが書いてなかったりします。間を置いて、もう一度資料と向き合うといいでしょう」