資料作りの出発点は「目的は何か」を明確にすること。国内・海外問わずプロジェクトを成功に導いてきたコンサルタント・平谷悠美氏が、構成のノウハウを伝授する。

<構成篇>

新人のプレジデント編集部員Tは、上司から「おまえの作る資料は何が言いたいかわからない」と言われて悩んでいた。丁寧に事実を調べ、わかりやすい言葉を選んでいるはずなのに……。

そこで、BCGでプリンシパルとして数々の企業に戦略・組織構造改革案などの提案を行っている平谷悠美さんに泣きついた。

「いい資料を作るには、まずPCを開くのではなく、頭で設計することが肝要です。どんなに見やすくて精緻化されている資料でも、受け手が必要としている情報が載っていない、懸案事項に刺さらない内容では、ただの紙切れ。『何のために作るのか』をしっかり定めるのが、資料作りの出発点です」(平谷さん)

資料の目的・論点のまとめ方は人さまざま。一人で熟考するタイプもいれば、ディスカッションしながら考えるタイプもいるという。

「私は話しながら考えるタイプ。テーマが与えられたら、早いタイミングで上司と30分ほどブレストします。そこで考えていることを一気に出し、全体を整理する。論点や作業設計を文章化してクライアントとすり合わせ、そこから改めて、資料の作成に取りかかります」

資料作りというと、一人で作業するイメージがあるが、上司と対話したり、関係者と調整したり、部下の進捗を確認したりと人とのコミュニケーションが大事だという。

さて、資料作りの核となるのが、問題解決のためのストーリーを構築すること。残念ながらまだ多くの企業で、資料といえば「事実の羅列」に終始したものが多い。それでは結局、その後何を目的にどう動くのか、ということを改めて話し合う必要が生じ、手間ばかりがかかる。現状の課題を把握したら、「何を目的に、誰が、どう動くか」というストーリーをしっかり構築し、その根拠となる資料を添付する。これこそがグローバルで活躍するコンサルタントの資料のスタンダードだ。

ストーリー構築前には必ずステークホルダー(利害関係者)に接触して、ヒアリングを実施する。

「クライアントの求めるものをしっかりと把握するために、先方とのヒアリングは欠かせません。その後、リーダーである私がストーリーを作りますが、それをチームで共有します。共有することで上司から他社の同じような事例によるアイデアをもらったり、部下が現場で聞いた声などを反映できます」

こうやって皆の意見を取り入れながら資料を作ることで、それぞれに責任感も芽生え、仕事にも統一感が生まれるという。次ページから、プロジェクトの説明資料を例に、論理的でわかりやすい資料の作り方を解説する。