部下の本音を引き出すためにはどうすればいいのか。組織人事コンサルティング会社「InterMedia」代表の野原裕美さんは「部下との1on1で『いつでも相談して』と声をかける人がいるが、残念ながらこの言葉にはまったく効果がない」という――。
資料を広げて話をするビジネスマン
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失注した部下のために1on1をセッティングしたら…

営業職3年目のAさんは、最近ミスが多く、成果を上げられていません。先日も、顧客への提案活動が遅かったために、受注が期待されていた仕事をフットワークが良い他社に取られてしまいました。

落ち込んでいるAさんが同じミスをしないように、上司のBさんは、Aさんに1on1を提案しました。

失注に対して叱責を受けるのではないかと、最初は少し緊張した様子だったAさんも、Bさんが優しく話を聞いているうちに表情がほぐれ、悩みを話し始めました。顧客への提案が遅れたのは、先方のニーズにマッチする提案をしようと、いろいろと調査して提案書を書いているうちに時間がたってしまったからだと。そして、もっと早くから提案書作成を進めるべきだったと反省しているとのことです。

Aさんの話に対してBさんはいろいろとアドバイスをし、Aさんも笑顔で「わかりました。ありがとうございます」と言いました。

Aさんから前向きなコメントが聞けたBさんは、「何かあったら、いつでも相談して」と会話を終え、「個別に話をして良かった」と安心したのです。

なぜ「いつでも相談して」は無意味なのか

けれど、その後AさんからBさんに1on1が依頼されることは、ありませんでした。そして、Bさんがアドバイスしたことも活かされず、他の顧客へのAさんの対応の遅さに気付いた社員からアラートが上がってきたのです。

「何かあったら、いつでも相談して」と言っただけに、こちらから再度1on1を提案すると相手を追い込むことになる気がして、Aさんのモチベーションに配慮してどのように指導すべきか、Bさんは考えています。

実は、「いつでも相談して」と優しく部下に寄り添う上司の言葉は、多くの場合、残念ながら効果がありません。

1on1を終えた時の晴れやかなAさんを見たからこそ、「これできっとAさんの営業成績も上がるはず」とBさんは安心したのに?

親身に相談に乗る「いつでも相談して」という上司のセリフが、なぜ効果がないのか、部下が頻繁に直面する困りごと別に見ていきましょう。