寄り添うべきは「人」ではなく「仕事のプロセス」

今ほど状況変化が質的にもスピード的にも大きくなかった時代には、上司と部下が時間をかけて信頼関係をつくることができました。また、上司や先輩の仕事を見ながら、部下が少しずつ成長することが可能でした。

けれど、今は違います。

転職が当たり前で、ライフイベント等で長期休暇を取る機会も増え、同じ人とずっと同じ仕事を続けられる(関係資本で戦える)状況だとは限りません。そして、仕事の内容や進め方も、昔の成功法則が今も使えるとは限らないうえに、短期間で成果が求められることも少なくありません。

つまり、「上司の姿を見て学び、時間をかけて成長する」余裕が、以前ほどない状態なのです。

筆者が従事するコンサルティング業務では、多くの場合、プロジェクト単位で仕事が進みます。

クライアントもプロジェクト体制も、プロジェクトごとに変わり、「初めまして」の人と仕事をすることが珍しくありません。また、仕事の内容が初めてのテーマであることも普通です。

このように「初めて」ばかりの状況でも、プロジェクト開始直後から成果を出してクライアントに価値を感じてもらわなければ、仕事が成り立たない世界です。

コンサルティング会社でどのように部下をマネジメントしているかを参考に、上司としてAさんは1on1で何をすべきだったかを整理します。

1on1で部下の満足度を高める「四段話法」

1)部下と一緒に「問題」の解像度を上げる

正しい問題解決は、問題を正しくとらえることから始まります。

部下が自覚している問題が、取り組むべき問題だとは限りません。

仮に「わかりやすい資料が作れないこと」が部下の悩みだとしましょう。部下の言葉をそのまま受け取って、資料の効果的な作成方法についてアドバイスをします。けれど、問題の原因が、本当は「作成方法」ではなく「資料を読む関係者への根回し」(合意形成)の問題だとしたらどうでしょう? 例えば、関係者に事前に方向性を承認してもらい、提案の方向性にOKをもらっておけば、資料を出した時点でひっくり返ることはありません。

このような場合、上司が部下に資料作成についてアドバイスしても、問題は解決しないでしょう。

問題解決は、問題を正しくとらえることができれば、半分成功したようなものです。

成果を出せていない部下ほど、そもそも「何を悩むべきか」が間違っていることが多いのです。だから、部下の言葉をそのまま鵜呑みにせず、部下の話を聞きながら、本当の問題は何かを明らかにする必要があります。

ただし、部下から悩みを聞いて、瞬時に問題の解像度を上げることは難しいかもしれません。そのため、普段から部下の仕事を観察して、何が問題なのか上司としてあらかじめ仮説を持っておくことが大切です。

向かい合って話をする2人のビジネスマン
写真=iStock.com/west
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