部下Aさんに足りなかったのは「調査の時間」ではなく…
冒頭の上司Bさんの場合、Aさんが「顧客のニーズにマッチする提案をするように調査に時間をかけていた」と言っても、それをそのまま受け取ってアドバイスせず、より深く問題の本質を検討すればよかったのです。
「提案の段階になってからニーズを調査しているということは、普段から顧客と十分に会話してニーズを把握できていないのではないか」という仮説を、もしBさんが持っていれば、「本質的な問題はAさんの資料作成力ではなく、顧客との関係性づくりだ」と気づけたかもしれません。
「自分の課題認識はズレていた」とAさんが気づき、本当の問題が何かAさんとBさんの認識が揃ったら、次に打ち手を合意します。顧客との関係性づくりのために、普段からAさんは何ができるか、それはいつまでにするのかを考えます。そして最後に、その打ち手を実行した結果をAさんから上司Bさんに報告するために、○月○日○時に、次回の1on1を実施しましょう、というところまで合意できればよかったのです。
令和の“理想の上司”は時間と精神の余裕が必要
正解で部下を引っ張るスタイルと、部下の仕事に伴走するスタイルでは、難しさが異なります。そして、後者のほうが、往々にして上司に負荷がかかるため、上司に時間的・精神的余裕が必要です。
そのためには、上司が自分の仕事の棚卸をして、徹底的に仕事のムダを無くし、余裕をつくらなくてはなりませんし、どのような問題にも対応するためのベースとしての論理的思考や問題解決力も大切です。
プロフェッショナルとしての成長に終わりはありません。上司が常に新しいことに挑戦し学び続けること、つまり継続的なリスキル・アップスキルが必要な時代になっていると言えます。