プレゼンテーションをする際に意識すべきことは何か。ベストセラー『1分で話せ』著者の伊藤羊一さんは「言葉に詰まらずにスムーズに話せるかどうかはあまり重要ではない。話すことにおいて必要な要素は大きく3つある」という。元日本マイクロソフト業務執行役員との対談をお届けする――。

※本稿は、YouTubeチャンネル「Bring.」の動画「『1分で話せ』の著者とプレゼンの神が明かす、「思い」の伝え方。結論・根拠・例えの3点セットで人を動かせ」の内容を再編集したものです。

プレゼン
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「スムーズに話すこと」はそこまで重要ではない

【澤円】僕は世間からプレゼンの専門家だと見られていますし、(伊藤)羊一さんも著書『1分で話せ』(SBクリエイティブ)がベストセラーになったこともあって、お互いに「話し方」についてよく相談を受けますよね。

【伊藤羊一】それらの人は、「うまく話す」ということに縛られているように感じています。「うまく話すにはどうすればいいですか?」と相談されるたび、僕は「その『うまく話す』ってどういうこと?」と相手に訊ねるのです。その答えが「『あー』とか『えー』とかいわずに、スムーズに話すこと」ならば、「そこはあまり重要ではないよ」と伝えます。

プレゼンでも商談でも、ビジネスにおいて話すことの目的はどこにあるのか? それは、こちらが目指すゴールに相手をいざなうことですよね。それさえできるのなら、「立て板に水」で話す必要などありません。そこだけは見失わないようにしてほしい。

【澤円】結局のところ、よどみなく話すというのはあくまで手段のひとつに過ぎません。そうできることを否定する必要はないけれど、最終的に相手を動かすことができなければ意味がありません。

プレゼン前にオーディエンスと会話する

【伊藤羊一】だから僕の場合、話すこと以外にもできることはすべてやります。それこそプレゼンに慣れていなかった頃は、講演会場に早めに行ってオーディエンスに話しかけていたほどです。そうした雑談によってオーディエンスをほぐしておくことで、プレゼン後の拍手も増えていきました。

【澤円】それは確かに有効な方法だと思います。雑談によって心理的な距離を縮めておけば、オーディエンスの参加者意識も満足度も高まりますからね。

【伊藤羊一】プレゼンというと、プレゼンターとオーディエンスのあいだで空間がわかれているように捉えられがちですが、そんなことはありません。「プレゼンターである僕がひとまず話題を提供しますから、それを笑うでも首をかしげるでも質問をするでもいいので一緒にやりましょう」という意識を僕は持っています。