話すことに必要な3要素
【澤円】表面的な話し方のスキルを磨いてどうこうなるものではないということを前提として、あえて話し方というものにフォーカスをあてるなら、やはり羊一さんは「1分で話す」のですよね(笑)?
【伊藤羊一】あの本を出してからもうネタのようになっていますけど(笑)、なぜ僕が「1分で話せ」といっているかの真意をあらためてお伝えします。話すということにおいて必要なものは、大きく3つだと僕は考えます。
それは、「結論」と「根拠」、さらに根拠を説明する「例えば」です。そのなかの根拠が3つくらいあると仮定すると、簡潔にまとめて全体で1分くらいになるだろうということから、「1分で話せ」といっているのです。
そもそも結論をいわないとなにもはじまりませんし、話すことにおいて結論は不可欠なものです。そして、なぜその結論に至ったのかという根拠も必要ですよね?
「Aというキャンペーンをやりましょう」が結論だとしたら、根拠は「売上が上がる」「ほとんどコストがかからない」「なにより会社の未来につながる」といったようなことです。根拠を示さなければ、ただ自分の意見を押しつけようとするわがままな人間だと自己紹介をしているようなものです。加えて、根拠をより具体的に説明する「例えば」があれば意見の説得力が増します。
プレゼンは「音楽コンサート」のようなもの
【澤円】そのような、いわば「型」があると、先のお話にあったゴールを見失わないことにも通じますが、「なんのために話しているのか」ということに対して自分自身も納得しやすいですよね。
【伊藤羊一】澤さんも、そういったなんらかの型を持っているのですか?
【澤円】プレゼンに関してミクロな話でいうと、「1スライド1メッセージ」ということは徹底しています。なぜなら、それ以上の情報量を詰め込むとオーディエンスが混乱してしまうからです。「このスライドはなんのためにあるのか」ということが、相手にすぐわかる状態にしておくわけです。
【伊藤羊一】マクロの視点から、全体のストーリーをつくる際に意識していることはありますか? 僕の場合だと、「最初はこうやって盛り上げる」「ここでこうやって落とす」「最終的にドーンといく」というように、音楽のコンサートをつくっているような感覚で本能的につくっています。
【澤円】僕も近い感覚ですね。僕の場合は、プレゼン資料をつくっている最中がリハーサルであり、同時にプレゼンテーションが既にはじまっているという感覚です。つくりながら、「こうやって話そう」とやっていると、つながりが悪くて引っ掛かりを感じることもあります。引っ掛かりを感じたらそこにブリッジになるような要素を入れるといった感じで、つねに本番を意識しています。