場数をこなし続ければ緊張はしなくなる
【澤円】話すことに関する悩みとして、「緊張する」というものもあります。羊一さんは話すときに緊張しますか?
【伊藤羊一】以前は緊張しましたね。緊張したし、うまくしゃべれなかったし、頭が真っ白になるということもありました。緊張しなくなるための秘訣は、こういうと身もふたもないかもしれませんが、「場数をこなす」「練習をする」ということに尽きます。
僕がはじめて孫正義さんにプレゼンしたときは、「世界の孫さんにプレゼンをするのだから」と事前に300回くらい練習をしました。そのあいだに、妙な感覚を掴んだのです。口が勝手に動いて、自分自身は幽体離脱して自分をコントロールしているかのような感覚です。いわば自分を俯瞰しているような感覚で、それを掴んでからはプレゼンで緊張することはなくなりました。
【澤円】場数を踏むことは大切ですが、注意したほうがいい部分もあります。それは、よくないやり方で100回こなすと、100回分下手になるということ。そういう事態を防ぐためにも、それこそ羊一さんが掴んだ感覚のような、俯瞰して自分を見るメタ認知が大切になります。「このやり方は間違っていないか?」と、自らをつねにチェックするのです。
ただ、僕の場合、幸いにしてメタ認知せざるを得ないことが多いのです。メディア出演なども多いため、自分の出演動画のレビューも必要です。嫌でもその動画を観なければいけないわけで、そうするなかで「次はこうしてみよう」というようにアップグレードすることができます。僕は話すことが専門職なのでそういった機会を得ることができますが、そうでない人はかなり意識的にメタ認知することが求められます。
会議は常に「主人公」の意識で
【澤円】プレゼンのように事前準備ができるケースならまだいいのですが、会議ではいきなり話を振られたり意見を求められたりすることもあります。会議の場で意識していることはありますか?
【伊藤羊一】会議などの場できちんと話せるようになるには、しっかりと会議に参加する必要があります。ぼーっとしていては、急に意見を求められたようなときに対応できるはずがありません。たとえ発言していないときでも、「会議の主人公」の意識を持って参加するのです。