商談を成立させるために、営業はどれくらい顧客のところに通うべきなのか。元リクルートの竹内孝太朗さんは、「足しげく何度も訪問すればいいというものではない。商品の内容や市場も鑑みつつ、“最低何回行けば売れるのか”を理論的に分析することが必要だ」という――。

※本稿は、竹内孝太朗著『営業スキル検定』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

顧客訪問のベストな回数

私は「3回目の商談でクロージングする」のがベストだと考えています。

必ずしも3回目でクロージングしなければならないというわけではありませんが、3回目を目標にクロージングすることをまず考えるのがよいというのは、これまでの私の営業経験に基づく裏づけがあるのです。

私のキャリアは、リクルートのカーセンサーという中古車関連事業からスタートしました。中古車の領域は、既存顧客が8~9割で、新規顧客は1~2割という世界です。

現在、独立後に創業した弊社「モノグサ」はSaaS(Software as a Service)事業をしており、既存顧客の対応はカスタマーサクセスが担当していますが、当時、私がリクルートに在籍していたころは、既存顧客も営業が担当していました。

売約済みの札が貼られた車
写真=iStock.com/Mypurgatoryyears
※写真はイメージです

何度も足しげく訪問した新人時代

既存顧客がほとんどで、しかも競合劣位の状態でしたので、そのころはとにかく足しげく顧客のところに通って、顔を見せるという営業スタイルで仕事をしていました。

なぜそうしていたかと言うと、「顧客のことを気にしている」というアピールのためもあったのですが、本当の目的は、現場に赴くことで顧客の一次情報を集めたかったからです。

競合劣位ということは、自社が提供する商品だけでは顧客の課題を解決できない状況であることを意味します。当時の現状としては、競合商品のほうがよいということですから。

そのような状況だったため、顧客に対して、商品からは独立した問題解決を提案することで信頼関係を構築したいという考えがあって、そのためにはどれだけ顧客のことがわかっているかが大切だと思ったのです。

また、私はまだ新人だったこともあり、担当する顧客数に制限がありました。

20社も回れば、すべての顧客を回れてしまうような感じでした。

そのような状況で取れる行動は、足しげく、何度も訪問するくらいしかなかったのです。ですから営業としてキャリアを歩み始めた初期のころは、「3回」どころか、それをはるかに超える、かなりの訪問回数をこなす営業をしました。