最低何回行けば売れるのか

その後、高校向けの教育事業(現在のスタディサプリ)に移ったのですが、20社どころか、取引先が1校もない状態から始まりました。要するに新規事業で、私は一人で商品販売と事業開発に従事していたのです。

全国に高校は約5000校あります。一人で全部回るのは不可能です。しかも、商品を作っていた最中でしたので、オンラインで広告を打てば売れるという状況でもありません。高校に直接訪問させてもらって、商品の説明をしつつ、ニーズも探らないといけないフェーズでした。

営業が訪問するしかなかったので、「では一人あたりどのぐらいの効率で回ればいいか」ということを真剣に考えました。もちろん1回の商談で受注することが理想なのですが、もしも商談1回で売れる商品なら、それこそマーケティングツールを活用してオンラインで売ればよいのです。

それができないので人が営業することにしたわけであって、「では最低何回行けば売れるのか」ということを考えたのです。

まずいったん顧客に情報を伝えなければならないし、導入する価格もそれなりに高かったので、伝えた情報を顧客が吟味する時間も必要です。

これらの事情をすべて考慮したうえで、「だったら何回がよいのか」といったふうに考えていき、3回目の商談で受注するのが最も効率的だろうという結論に至りました。これが、弊社で実践している「営業スキル検定」の原型になっています。

ただし、これは今の弊社の営業スタイルであり、弊社の市場に合ったやり方です。「これが唯一絶対の正解」ではありません。

あくまで一例ですが、具体的な進め方を以下に説明したいと思います。

オフィスで握手する2人のビジネスマン
写真=iStock.com/LumiNola
※写真はイメージです

初回訪問で話すこと

初回訪問は顧客に自覚的になってもらう

初回訪問では、商談に1時間いただくというのを前提として、営業活動を設計しています。

最初の20分ほどは、ほぼ一方的にこちらがしゃべります。その20分では、プロダクトと自社の価値を伝えます。その後20分、Q&Aの時間を設けたあと、最後の20分でヒアリングを行います。

ヒアリングでは、顧客の目標、現状などを聞いていきます。

ここで重要なことは、情報を聞き出すことよりも、「課題に対して顧客に自覚的になってもらうこと」です。すなわち、顧客に自身が課題に気づいたと感じてもらうということですね。

「ああ。自分は困っているのかもしれない。そしてその困りごとの解決に、この人が提供してくれるものが役に立つのかもしれない」と思ってもらった状態で初回訪問を終えるのが、初回訪問の目標になります。

初回訪問で1時間半も2時間も時間をもらうというのは難しく、私の感覚では30分から長くて1時間です。

30分であれば、以上のプロセスを10分ずつに区切って実施することになります。