きちんと納品しているのに、期日通りに支払ってくれない取引先に、支払いをしてもらうためにはどのように交渉したらいいのか。ビジネス交渉コンサルタントの生駒正明さんは「いきなり支払いを迫るのではなく、時間をかけて粘り強く、一歩ずつ進める必要がある。私の場合は、サイン取得から始め、一歩ずつ進めて回収に成功したことがある」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、生駒正明『なぜかうまくいく交渉術』(秀和システム)の一部を再編集したものです。 

請求書とボールペンと電卓
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取引先がなかなか売掛金を払ってくれない

「取引先が売掛金を払ってくれない」「なかなか期日を守ってくれない」といった経験がある方も多いのではないでしょうか?

私が若い頃は、きちんと納品しているにも関わらず、取引先に約束通り払ってもらえず、売掛金の支払いが滞るケースが多々ありました。営業の仕事は売掛金を回収するまでだと指導され、根気よく回収の交渉を続けたのでした。

しかし、当時私が若かったこともあり、相手に真剣に対応してもらえないことも少なくありませんでした。

前任者から引き継いだ取引先は、毎月、滞留売掛金リストに挙がる問題のある会社でした。そこで、私は問題になっている点を洗い出し、時間をかけてでも一つひとつ解決していくことにしました。

まずは、納品書を再確認し、相手の受領印があることを確かめました。

私は、相手に支払いをさせるために、私の上司への報告書という形にして、相手にサインを求めることを思いつき、実行しました。

その書類には「商品を確かに受領しているので、契約どおり支払いを行う」と明記しておきました。

相手には、「上司に叱られるので、これにサインをしてください」とていねいに依頼し、サインをもらうことに成功しました。

それでも支払いは行われません。そこで私は、その書類を持って再度訪問し、「過去のことはさておき、私はこの案件を引き継いだ者です。この書類はあなたがサインしたものです。ここに書かれている通り、支払いをしてください」と言いました。

さらに、「これはあなたの正式なサインがある書類ですので、社内法務部への報告に使用させていただきます」と伝え、プレッシャーをかけました。本当は法務部への報告などはないのですが。

その後も、支払いが行われない場合、再度訪問し、「先月の支払いがまだ行われていません。このままでは大きな問題になります」「今月の支払いも同様に遅れることがあれば、さらに深刻な事態となります」と強調しました。

すると、次第に相手もプレッシャーを感じ、最終的には支払いが行われたのでした。