異例の速さで進む連立協議

前回2021年9月に行われたドイツ総選挙では、ショルツ新政府が発足したのはその2カ月半後。前々回のメルケル第4次政権では連立交渉で手こずったため、半年もかかった。では、今回の連立交渉は、どうなるのか?

ドイツ連邦議会(下院)で演説するキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首=2025年3月18日、ベルリン
写真=ロイター/共同通信社
ドイツ連邦議会(下院)で演説するキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首=2025年3月18日、ベルリン

総選挙は2月23日だったが、3月8日には、CDU/CSU(以下・CDU)と社民党の代表が記者団の前に現れて、大まかな“打診”が終了したことを報告。10日より早速、本格的協議、つまり、共同の政策綱領の作成に入ることを宣言した。新議会の招集は3月25日の予定だが(選挙後30日以内に招集しなければならないと法律で決まっている)、メルツ氏はそれまでに社民党との連立を固めるつもりだ。

なぜ、彼らがこれほど急いでいるかというと、もちろん理由がある。CDUと社民党は、財政拡張のために国家の債務を増やしたいのだ。それも合計で少なくとも9500億ユーロになるというドイツ連邦共和国始まって以来最高額の債務である。

「債務ブレーキ」緩和の裏にある焦り

ただ、ドイツには、「債務ブレーキ」と呼ばれる法律があり、公的債務残高の年間の増加がGDPの0.35%を超えてはならないということが基本法(憲法に相当)で定められている。そのため、それ以上の借金をしたければ、この「債務ブレーキ」を緩めなくてはならず、そのためには基本法を改正しなければならない。

そして、基本法の改正には議会の3分の2の賛成を得る必要がある。しかし、まもなく召集される新議会では野党が強いため、3分の2の賛成を得ることは絶対不可能なのだ。

そこでCDUと社民党が何を考えたかというと、まもなく賞味期限の切れる現在の国会で、大急ぎで基本法改正を済ませてしまおうということだ。新議会が発足するまでは旧議会が生きているため、このアイデアは違法ではないという理屈である。