選挙の敗者が勝者となる皮肉ぶり

だからこそ、選挙戦の間、AfDの政治家たちは有権者に向かって、「CDUと社民党は裏でつながっている」、「本当にドイツの政治を改革したいなら、AfDを選んでほしい」と呼びかけていた。ただ、今になって、その言葉が正しかったかと思い直しても、まずいことに、有権者の唯一の武器である選挙は終わったばかりだ。つまり、もう遅い。

ベルリンのシュプレー川
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しかも、ここで重要になってくるのが緑の党の存在だ。ショルツ政権の下でドイツ経済がボロボロになった大きな原因が、緑の党のハーベック経済・気候保護相が断行した脱原発をはじめとする、無謀なエネルギー政策だった。それに気づいた国民が緑の党に背を向けたため、緑の党は選挙で惨敗した(得票率11.6%)。

ところが、現在、メルツ首相が必死で進めている基本法の改正では、緑の党の票なしには賛成票は3分の2には到達しない。つまりメルツ氏は、社民党だけでなく、緑の党にも擦り寄らなければならなくなった。

緑の党は元々、異常にお金のかかる彼らの気候対策を支えるため、債務ブレーキを外すことを主張してきた。それにより、どんどん高くなる電気代を補助し、また、再エネ促進のためのコストを大幅に増やすことが目的だ。そこで、すでに昨年よりCDUに基本法改正を持ちかけていたが、CDUはこれ見よがしに緑の党を批判し、退けてきた。