結局、前政権の顔ぶれが復活するだけ?

このままでは、今後、果たして社民党が、メルツ氏の思惑通り、あっさりと連立を組んでくれるかどうかもわからなくなってしまった。ひょっとすると、緑の党と左派党と共に、左派の少数政権を立てようとするかもしれない。一方、CDUはというと、自分で築いた「防火壁」に阻まれて、連立相手がいない。社民党はどちらに転んでも与党になれる。

 「防火壁」で作戦を間違ったCDUは、その後の公約破りで信用を失い、今では手詰まり感が激しい。

では、ドイツ国民は? これほどたくさん不誠実なイメージがくっついてしまった人物を、今でも自分たちの首相にしたいと思っているのだろうか。CDUはこのままでは、おそらく嵐の中をフラフラと左の方向に流されていく。ドイツでは近年より、計画経済、言論統制がすでに静かに進み始めているが、次に来るのは、大規模な軍拡、徴兵制の復活、国家権力の増大と自由経済の失速となるのか? 総選挙の結果がこんなところに向かうかもしれないなどと、いったい誰が想像したことだろう。

ドイツの国会議事堂
写真=iStock.com/Marcel Storp
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「投票率82.5%」がなぜ日本でもできないのか

おりしも日本の政治も、選挙が終わってまだ間もないというのに、すでにボロボロだ。ドイツも日本も、既存の政党はどれもこれも、戦後70年間、築いてきた利権構造から抜け出せないし、おそらく抜け出したくもない。ドイツではAfDが出現して、その不都合な現実がにわかに可視化したため、政治が荒れている。トランプ大統領が、米国を足元から改革しようとしている動きと似ているかもしれない。

一方、日本ではまだ方向が定まらず、混沌だけが進んでいる。ただ、過去30年間の経済の停滞が、今後、はっきりと国民の貧困化に舵を切るなら、日本人も黙ってはいないのではないかと思う。

ドイツにせよ、日本にせよ、国民が敗者になることだけは絶対に起こってはいけない。ドイツの今回の選挙の投票率は82.5%だった。日本人も政治を諦めず、民主主義の力を発揮し、国民主権を行使すれば、政治の改善は不可能ではないと思うのだが……。

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