「あまりに臭い」と出禁になった男性

ご近所トラブルが発端となった民事裁判は、全国どこの裁判所でも毎日のように審理されています。ほとんどの事件がおおっぴらに報じられることなく、ひっそりと逮捕・起訴され、粛々と公判が行われているのが現実です。

そこで、私が傍聴した「地獄のような近所トラブル」裁判をご紹介します。

最初にご紹介するのは、「コンビニ」を舞台にした刑事裁判の傍聴記です。近所トラブルというと、同じマンションやアパート内、隣の家などとの諍いが頭に浮かびますが、実はコンビニでの事件も近所トラブルが発端になっていることが少なくないのです。

罪名 暴行
被告人 無職の男性(66歳)

2024年1月6日の夜11時過ぎ、被告人が都内のコンビニエンスストアで男性店員(50歳)の左肩を右手の拳で殴ったという事件でした。

まずは、罪状認否です。

裁判官「起訴状に何か間違いはありますか?」
被告人「いい年して言葉遣いが悪いんですよ。店員がホントに。後ね、肩に当たってないと思う」

と、訊いてもいない男性店員の悪口を言ってから、手は男性店員の肩に当たっていないと全面否認。この罪状認否を聞いた弁護人は目を丸くして、

弁護人「ちょ、ちょっと事前の打ち合わせと違うので……。少し被告人と話をしたいのですが」

と困った様子。そして弁護人と被告人が近付いて、小声で20秒ほどコソコソと話をしてから、改めて罪状認否に戻りました。

裁判官「どうです? 起訴状の内容に間違いはありますか?」
被告人「ありません。でも、言葉遣いが悪いんですよ~」

罪は認めたものの、男性店員の言葉遣いには納得していない様子です。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は中学卒業後に会社員になり、現在は退職して無職。4年前に妻を亡くし、今は一人暮らしをしているそうです。そして被告人は犯行の半年前の23年7月、近所にある犯行現場のコンビニへ行ったところ、「あまりに臭い」という理由で出入り禁止になったとか。

それで犯行当日、酔っ払った被告人がコンビニに入ると、レジの中にいた男性店員が「出禁だから来るな!」と被告人を入店拒否。しかし被告人は忠告を聞かずにレジのほうへ近寄ったため、男性店員が被告人と小競り合いに。すると酔った被告人は何かを言った後、右手の拳で男性店員の肩を殴った、というのが事件の流れです。