「趣味は仕事です」。そんな人は要注意だ。最期のときを迎える段になって、「仕事以外の趣味を持っておけばよかった」と後悔する人は少なくない。大津氏によれば、団塊より下の世代にその傾向が強い。「仕事一筋だった人が、病気で復職の望みがないとわかると非常に苦しみます。仕事以外の引き出しがひとつでもあれば違うのですが」。

趣味に負けず劣らず人生を豊かにするのが恋愛だ。今思いを寄せる人がいるなら、悔いが残らないように行動を起こしてもいい。ビハーラ僧の三浦紀夫氏のもとで暮らしていた70代の男性は、かつて単身赴任先でいい仲になった女性が忘れられずにいた。定年退職後、なけなしの退職金を握りしめて会いにいったものの、結局はお金を使い果たして捨てられてしまう。当然ながら家族にも愛想をつかされ、最期は一人で亡くなったという。だが、好きなように生きれば悔いはないのかもしれない。

恋愛とは“道ならぬ恋”だけを指すのではない。夫婦もまた恋愛のひとつの形だ。長年連れ添った奥さんに心の拠り所を求める人も多い。三浦氏が看取った60代の男性は、見舞いに来た奥さんをなかなか帰そうとしなかったという。最期に一人ぼっちで寂しい思いをしないためにも、身近な人を大事にしておきたい。

死ぬ間際によくある後悔【趣味・恋愛編】

●ジムであんなに鍛えていたのに
――ムキムキな筋肉が自慢だったが、不治の病に。筋トレする暇があったら健診を受けるべきだった。

●ようやく第二の人生が始まると思ったのに
――定年退職したら社会貢献活動に精を出すつもりだったが、50代で病に侵される。定年を待つことはなかった。

●パチンコに連れてってくれ
――パチンコが最高の娯楽だった。今は車椅子だが最期にもうひと勝負したい。

●もう何の生きがいも感じない
――仕事だけが生きがいの人ほど、病気で働けなくなったときの絶望は深い。

●女房が心配してくれないんだよ。こんな甲斐性なしじゃ仕方ないか
――好き放題に生きてきた。病気になった途端、妻に面倒を見てもらおうとしても無理な話だった。

●ちゃんと入籍しておけばよかった
――訳あって事実婚を選んだが、やはり夫婦になればよかった。

●カノジョの◯◯ちゃんにもう一度会いたい
――単身赴任先でいい仲になった女性が恋しい。「あのころの俺は結構モテたよな」と懐かしい。

●頼むからそばにいてくれ
――病床で感じる孤独感は想像以上だ。少しでも奥さんがそばを離れると不安でたまらない。

ビハーラ僧 三浦紀夫
真宗大谷派僧侶、ビハーラ21事務局長。1965年生まれ。44歳で得度。高齢者施設を運営するビハーラ21常勤僧侶に。終末期の高齢者に寄り添う。
 
(篠原沙織=撮影)
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