人工知能に負けない仕事力の養い方

【永瀬】以前、三井住友銀行の人事担当を経て専務になったラ・サールの後輩とこんなやりとりがありました。「自分の成績などの情報をコンピューターに入力することで、どの講座をどのように受ければ絶対に志望校に合格するかが自動的にわかるシステムをつくり上げたいと思っている」と。すると彼から「先輩、申し訳ありませんが、それは要するにバカをたくさんつくるということですね」という言葉が返ってきた。それを聞いて私はガーンと衝撃を受けた。そこからクリエーティブな人間をたくさん育てていこうと志し、仕組みをつくり上げているのが今ですね。

【弘兼】先ほど話に出た、「グループ制」のリーダー育成と密接に関わってくる気がします。永瀬さんの考えるリーダーの資質とはどのようなものでしょうか?

【永瀬】コミュニケーション力、カリスマ性などもありますが、最も大切なのは「志」。自分はなぜ勉強するのか、将来何をしたいのか。学びの根っこにあるのはそこです。うちのグループの1つ「四谷大塚」では小学生を対象とした「全国統一小学生テスト」で小学4年生の成績優秀者を30人選抜し、アメリカの名門大学などを視察する取り組みを実施しています。優秀な子どもたちが10日間も団体行動してディスカッションを続けていくと次第に変化が起きる。最初は医者になってお父さんの病院を継ぐと言っていた子が、「基礎研究に従事して副作用のない薬を発明したい」と言い出すこともある。

【弘兼】自分の周りのことだけでなく、高い視野から物事を見るようになる。そういう人間をリーダーとして育てていくのですね。

【永瀬】東大を出ても世の中であまり活躍できていない人が3分の1ぐらいはいると思っています。そのほか3分の1は普通で、極めて優秀な層も3分の1です。受験の点数がどれだけ高くても、エゴイストである人はリーダーになれません。

【弘兼】人望がない人の下には誰もつきたくない。

【永瀬】その通り。日本再生のためには強いリーダーが必要です。これからは問題や課題を解決する人材を育てなければなりません。うちも今2月1日付でAI開発室を新設しましたが、30年後にはAI(人工知能)の発達で今ある仕事の60%はなくなるという予測もあります。未来を担う人が問題解決能力を養い、リーダーシップを発揮していかねばなりません。